ユニセフ
-
NEW
「世界の女性や子どもが置かれている状況を知る」パート17 〜災害と子どもの心のケア【後編】〜
災害と子どもの心のケアは、今回は最後となります。前編では、主に子どもの心のケアで大切な4つのことを紹介しました。中編では、被災した子どもに起こる反応を年齢別に示し、その対応策をお話しました。今回は、子どもの被災場面を再現した遊びや専門的な治療が必要なとき、子どもをケアする大人のケアについてお話します。 1. 被災の様子を再現した遊び 子どもは、被災した後に被災の様子(地震や避難など)の絵を描いたり、被災した場面のごっこ遊びをすることがあります。大人はびっくりすることでしょう。大人の言葉をそのまま真似たり、テレビなどを見た様子を語ったりします。 子どものこのような行動は、遊びを通して気持ちを整理したり表現したりしている様子であり、子ども自ら回復しようとする過程で見られる行動です。基本的に、やめさせることなく見守ってください。無理に否定したりやめさせたりすると、子どもの気持ちを表現する場がなくなってしまいます。子どもが言葉に出している様子を受け止めてあげましょう。 反対に、大人が子どもに被災の体験を無理に話させることは避けなければなりません。嫌がる子どもに衝撃を再現させるよう行為となります。子ども自身が話したいかどうかが大切です。 2. 専門的な支援が必要なとき 周りの大人が一生懸命にケアをしても症状が非常に強く出る、時間がたってもおさまらないといった場合には、専門家の支援が必要です。次のような症状がある場合は、精神科・心療内科などの専門医に相談しましょう。または、保健所、養護教諭などに相談し、適切な診療科につないでもらいましょう。
もっと読む11月 10. 2021#カウンセリング -
NEW
「世界の女性や子どもが置かれている状況を知る」
パート14 〜貧困〜今回は、世界の貧困についてです。皆さんは貧困というと、どのようなことをイメージしますか。お金がなく、食べ物や住む場所がないといったことが浮かぶかもしれません。世界ではどれくらいの人が貧困状態なのか、貧困の子どもたちはどのような暮らしをしているのかを紹介します。 1. 世界の貧困について 新型コロナウイルス感染症の世界的な流行以前は、推定子どもの6人に1人(3億5600万人)が貧困状態でした。コロナ渦では、さらに流行が落ち着いた後でも子どもたちの貧困は悪化すると推測されています。 以下ユニセフHPから引用> 極度の貧困を表す国際基準は、「1日1.9米ドル未満」で生活する状況です。「世界の経済的貧困状態にある子どもたちの推計:最新情報」(原題:Global Estimate of Children in Monetary Poverty: An Update)によると、極度の貧困状態の子ども3分の2を、社会的なセーフティネットが限られているサハラ以南のアフリカの子どもが占めています。 分析から、極度の貧困状態の子どもの数は、2013年から2017年の間に2900万人減少したとされています。しかし、ここ数年の減少速度は遅く、さらに今後は新型コロナ感染症の流行の影響を受けるリスクがあると考えられています。 2. 子どもたちの暮らし 子どもが貧困であるということは、その親も貧困であることが多いでしょう。親がいない場合もあるかもしれません。親の病気や失業などで親が働けない場合、子どもが一家を支える役割を担うことがあります。学校をやめ、ごみ拾いで換金したり食べ物を売ったりしますが、1日それほどたくさんのお金を稼ぐことはできません。 また、大人に混じって工場などで働くと、不衛生な状況で体調を崩したり、体力が持たなかったりするでしょう。十分な食べ物がない場合は、身体を壊しても、適切な治療を受けられない可能性が高くなります。さらにそのまま学校に行
もっと読む10月 12. 2021#ユニセフ -
「世界の女性や子どもが置かれている状況を知る」
パート13 〜世界のトイレ事情〜皆さんは、トイレがない生活を想像できるでしょうか。日本では、ほとんどの地域で家庭にトイレがあり、公衆トイレも設置されていますね。ショッピングセンターやビルの中にもトイレがあり、気兼ねなく使用することができます。でも、世界を見回すとトイレがあることが当たり前ではない地域があります。今回は、世界のトイレ事情や不衛生なトイレが健康に及ぼす影響などについてお話します。 1. 世界のトイレ事情 現在、世界の3人に1人はトイレがない状態だと言われています。ユニセフによると、2020年では36億人が安全で衛生的なトイレが使用できない状態です。(2017年のデータでは42億人)このうち4億9400万人はトイレがなく、屋外で用を足しています。(2017年では6億7300万人以上) そして、屋外排泄※1をしている人のうち92%が農村部に暮らしていることが分かっています。2000年以降、ユニセフをはじめ各国の国際協力によって、世界のトイレへのアクセスは改善されつつあります。しかし、都市部と農村部との格差は大きいままです。世界の人々のトイレの使用状況調査(2020)では、世界人口の54%(42億人)が安全に管理されたトイレ※2を、24%(19億人)が基本的なトイレを利用している一方で、残りの21%の方が清潔なトイレを使用できていません ※1 屋外排泄:道場、森、海岸、その他の屋外で排泄すること。 ※2 安全に管理されたトイレ:排泄物とほかが接触しないように分けられている。あるいは、別の場所に運ばれて安全で衛生的に処理される設備を備え、他の世帯と共有していない改善されたトイレのこと。基本的なトイレ:他の世帯と共有していない改善されたトイレのこと。 2. トイレがあるだけでは安心できない トイレがあり、利用できることは大切なことですが、それだけでは十分ではありません。排泄物が安全に処理できることも同じように重要です。屋外排
もっと読む10月 11. 2021#トイレ -
「世界の女性や子どもが置かれている状況を知る」
パート12 〜望まない妊娠について〜「望まない妊娠」と聞いてどのような印象を持つでしょうか。おそらく避妊に失敗した、性暴力を受けたなど様々な状況が浮かぶでしょう。日本でも望まない妊娠をする女性がいますが、世界に目を向けるとその原因となることが日本とは少し違うことに気がつきます。今回は、世界においてなぜ望まない妊娠が起こるか、コロナ渦での状況、望まない妊娠が女性に与える影響についてお話します。 1. 望まない妊娠の現状 世界の医療団によると「世界における望まない妊娠の数は年間8,000万件、危険な妊娠中絶は2,200万件にも及ぶといわれています。妊娠中絶が処罰の対象であったり、非難を浴びたりする国がたくさんあります。そのため、女性たちは秘密裏に危険な中絶処置を受けるしかありません。このような危険な中絶処置が原因の合併症による死亡は、年間5万人にも及ぶと推定されています」と記載されています。 2. 望まない妊娠はなぜ起こるか 望まない妊娠はどのようなことがきっかけで起こるかを考えてみましょう。まずは、幼いときに結婚を強制される児童婚が挙げられます。児童婚は、多くは結婚相手から家族が経済的援助を受けるために行われ、子どもは暴力や監禁に近い状態で暮らしていることがあります。未熟な子どもでも当然、妊娠する可能性はあります。 また、性犯罪によって妊娠するケースもあります。中絶を処罰の対象としている国では、安全な中絶処置が受けられないため、危険な処置を受ける人もいます。さらには適切な避妊手段が利用できないことも原因の一つです。避妊具が手に入らない、買えない、相手に使ってもらえないことがあります。コンドームなどは、男性が使いたがらない場合もあります。 女性が避妊のためのピルを飲むことを許さないパートナーがいます。男性が子どもがほしいと思っていても、女性がほしくないと思っている場合は、望まない妊娠となってしまいます。他に、避妊手段や妊娠がどのよ
もっと読む9月 30. 2021#コロナ禍 -
「世界の女性や子どもが置かれている状況を知る」
パート11 〜妊産婦死亡について〜妊産婦死亡という言葉を聞いたことがあるでしょうか。妊娠中や産後の女性が亡くなることです。日本では、妊娠中や産後の女性が亡くなる数は、世界的に見ると非常に少ないです。しかし、世界を見わたすと日本とは違う課題が山積みになっています。今回は、そんな世界の妊産婦死亡についてお話します。 1. 妊産婦死亡とは 妊産婦死亡率とは、出生10万人あたりの妊娠中から産後42日以内の妊産婦死亡数をいいます。妊娠合併症や出産時の出血、感染症、メンタルヘルスの問題など様々なことが原因となっています。 2. 日本の現状 妊産婦死亡の日本の現状は、1990年からの20年間で妊産婦死亡率は大幅に減少したとされています(2019年の産科婦人科学会の報告)。2018年では、妊産婦死亡の人数は、10万対して3.3人です。原因は、産科出血19%、脳出血14%、羊水塞栓11%、心臓大血管9%の割合となっています。一方で産後うつなどのメンタルヘルスの問題による自殺も問題になっています。 3. 世界の現状 2019年のユニセフの報告書によると、妊産婦死亡の86%がサハラ以南のアフリカと南アジアに集中しています。紛争の影響を受けている国では、妊産婦の他、新生児、子ども、青少年の死亡率も非常に高くなっており、2019年では、1時間に33人の女性が出産で亡くなっているとされています。 妊産婦死亡は適切な時期に妊婦健診を受け、出産時にトレーニングを受けたスタッフのサポート受けている場合、もっとリスクを少なくできます。しかし、開発途上国の多くの国では、妊婦は妊婦健診を定期的に受けないことも多く、出産も自宅で行うことが多いのです。その理由は、助産施設までの距離が長い、助産所までの交通機関がない、そもそも通える場所に助産施設がないこともあります。また、トレーニングを受けたスタッフがいない場合は家族だけ、または伝統的産婆と呼ばれる村の女性が出産を介
もっと読む9月 29. 2021#ユニセフ -
「世界の女性や子どもが置かれている状況を知る」
パート8 〜予防接種について〜日本人の多くは、小さい頃に予防接種を受けている方が多いと思います。破傷風、百日咳、ポリオ、はしかなど、たくさんの予防接種を受けて病気になるのを防いできました。しかし、世界を見回すと予防接種を受けたくても受けられない子どもたちがたくさんいます。今回は、世界の子どもたちの予防接種状況についてお話します。 1. 世界の予防接種の現状 ユニセフは、2020年に定期予防接種による基本的なワクチンの接種を受けられなかった子どもは2300万人と発表しました。2019年よりも370万人増えたとされています。この原因は、新型コロナウイルス感染症の流行によって予防接種サービスの中断が影響していると考えられています。この中でも1700万人の子どもが1度も予防接種を受けていない可能性があるとされ、危機感が高まっています。この子どもたちの多くが、紛争地域、非公式の居住区やスラムに住んでいます。 アメリカやインドなど、普段は90%以上の予防接種率がある国で、接種率が80〜85%まで低下しているというのが現状です。参考に2018年の予防接種率を示します(表1)。日本ではほとんどの子どもが受けている予防接種ですが、世界の現状は非常に厳しいです。コロナ渦では、この数字を下回っている可能性があります。 表1.結核を予防するBCGの予防接種率 日本99 %ラオス79 %ハイチ83 %ナイジェリア53 %チャド59 % 出典:世界子供白書2019 2007年
もっと読む8月 11. 2021#コロナ禍 -
「世界の女性や子どもが置かれている状況を知る」
パート7 〜児童労働について〜「児童労働」と聞いてどのようなイメージを持たれるでしょうか。子どもが働くとは、どのようなことで、どのような影響をもたらすのでしょうか。世界では、児童労働が問題となっています。大人のように働く子どもを取り巻く現状は非常に厳しいものです。今回は、児童労働について紹介します。 1. 児童労働の現状 2021年にユニセフと国際労働機関が発表したデータによると、世界には児童労働に従事している子どもの数が1億6000万人にのぼることが発表されました。過去4年間で840万人の増加です。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響で、数百万人が児童労働に従事させられるリスクがあると指摘されています。 報告では、5歳〜11歳の子どもの児童労働が増加しているとされています。健康面や安全、精神的に負担が高く子供に悪影響な可能性が高い危険な労働に就いている5歳〜17歳の子どもは、2016年の650万人から増加して、790万人となっているのです。子どもたちが就いている労働の内容は次のとおりです。 農業70%1億1200万人サービス20%3140万人工業10%1650万人 ※ユニセフの報告より作成 2. 児童労働による悪影響 児童労働は、健康面や教育面など様々なリスクがあります。 健康 子どもの労働は、子どもの健全な育ちを阻害します。基本的な身体や心の健康は、本来子どもがのびのびできる環境で育まれるものです。それが労働という環境下では
もっと読む8月 10. 2021#コロナ禍 -
「世界の女性や子どもが置かれている状況を知る」
パート3 〜児童婚について〜今回は児童婚についてお話します。ユニセフの定義では、児童婚とは18歳未満の結婚のことをさします。日本では女の子は16歳以上で結婚できるとされていますが、児童婚は、もっと若い年齢で行われていることが多く、少女への悪影響が叫ばれています。それでは、児童婚について詳しくお話しましょう。 1. 児童婚の現状 世界では毎日33,000件、総数では世界全体で7億5000万人の女性と少女が18歳未満で結婚しています。そのうち、3人に1人以上(2億5000万人)が15歳未満で結婚しているというデータがあります。42%がアジア、26%が東アジアと太平洋地域、17%がアフリカで暮らす女性や少女です。貧困家庭に多く、都市部よりも地方で多いとされています。 2. なぜ児童婚をするのか 児童婚は、少女自身で決めることはなく、親が決定権を持っています。児童婚だけでなく、娘に有害な慣習を強いる親は、よかれと思って行っている場合も多く、子どものうちに結婚させることで、女性の将来の安寧が約束されると信じています。代々受け継がれている伝統的な慣習に、逆らうことができないと感じている親もいるかもしれません。 3. 児童婚による弊害 多くの場合、児童婚をするとその少女の学校教育はそこで終わってしまいます。結婚すると家事を行い、妊娠・出産をすることになることが多いのです。教育よりも子どもを生み、家族のために生きるということを強いられます。 将来の夢を持ち、勉学に励んでいてもどんなに成績が良かったとしても、結婚が決まると嫁ぎ先では学校に行かせてもらえず、その後教育を受ける機会はほぼないと考えられます。自分の権利や自立したい思いなどは、表出することも許されない風潮の中で、だんだんと大きな流れにのまれていくのです。そして、知識も自立の技術もないまま時間が過ぎていきます。
もっと読む6月 30. 2021#ユニセフ -
「世界の女性や子どもが置かれている状況を知る」
パート2 〜女性性器切除について〜皆さんは、世界の国々で少女や女性が受けている割礼という儀式を聞いたことがあるでしょうか。日本では、行われておらず聞き慣れない慣習です。しかし、世界で2億人もの少女や女性が割礼を受けいるとされています。「割礼」とは何か。詳しく知らないという方もいることと思います。今回は、月経や出産にも関わるこの割礼についてお話します。 割礼とは何か 割礼とは、女性性器切除(Female Genital Mutilation:FGM)のことです。「女性性器切除は、医療目的以外で女性の女性器の一部もしくは全体を切除するか、女性性器に対してその他の損傷を与えること」(「世界人口白書2020」より)です。 ここで、すでに衝撃を受けている方も多いことでしょう。なぜそのようなことをするのか、その後どうなってしまうのか、非常に気になりますよね。ここでは、男性の割礼と区別するために、あえて「女性性器切除」という言葉を使用しています。男性の割礼とは意味が違い、「割礼」という言葉を使うことによって、女性性器切除の問題がぼやけないようにするためという意見もあるからです。 何のために行うのか 女性性器切除は宗教や地域の慣習による儀式で、次のような誤った信念に基づいて行われています。そして、男性の都合によって行われているのです。 女性の妊娠・出産の可能性を高める男性の性的快感を高める女性の性欲を抑える宗教的信仰心に叶い、地域社会に受け入れられる少女の純潔・名誉・清潔さを保持し、より結婚しやすくなるため 誰によって行われているのか この女性性器切除は誰によって行われていると思いますか。それは、多くは女性の手で行われています。多くは、地域の産婆、年配の女性などによって行われています。「少女や女性が地域社会で
もっと読む5月 20. 2021#ユニセフ