「性教育の後進国」と言われてしまっている日本ですが、国際交流やスマホの広がりを受け、徐々に国際レベルでの性教育の必要性が受け入れられつつあります。学生時代を振り返ってみて、実は同級生の中の「10人に1人はLGBTQ・性的少数者だった」と考えると、驚かれるのではないでしょうか?
LGBTQや性的少数者の方のなかには「身体は男性だから、我慢して結婚をした」という方や、「同性を好きになったが、そんな自分はおかしいのではと思い隠して生きている」方など、根深い問題があり「誰からも理解されないこと」に苦しみ、自殺してしまったような方も多くいらっしゃるのです。
そんな経過を経て、日本でも徐々に「いろいろな人がいるのだよ」という多様性の時代に入りつつあり、多様性を教えるためには性教育は欠かせないものとなっています。
元々日本では、「性教育=性感染症や子供を産むことについて」くらいの認識があるようですが、実は世界規模で見た性教育は、人権や人間関係など生きるために必要な知識になっています。
今回は、国際セクシュアリティ教育ガイダンスを元にした包括的性教育に関して簡単に見ていきましょう!
国際セクシュアリティ教育ガイダンスってなに?
初版は2009年に出され、国連合同エイズ計画(UNAIDS)、国連人口基金(UNFPA)、国連児童基金(UNICEF)、世界保健機関(WHO)の協力の元にユネスコ(UNESCO)が作成しました。 基本的に、他の国々はこれらの内容を元に性教育を行っていますが、残念ながら日本の教育会ではまだ取り入れられていないのが現状です。
最新版は2018年に国連女性機関(UN Women)が追加して、10年の成果を踏まえ、作成されました。 ポイントとしては性教育とは身体のことだけではないとされており、内容は8つのキーコンセプトからなるとても包括的なものとなっています。
また、「家庭や学校、施設、地域、行政など様々な場所から性教育を進めましょう」という内容や、0歳から18歳までの年齢を4つのグループに分け、段階的に内容を整理し、何度も繰り返し教えることの重要性を説いています。
また、お子さまに対して、おとなや社会の「こうあるべき」を教えるのではなく「学ぶことは自分が自分らしく生きるために大切な権利です」と教えることも性教育の一環となっており、「色々なことを学ぶことによって、自分で自分の生き方を自分らしく決めていく」ことも目的の1つになっています。
性教育って実際にはどんな内容なの?
先ほどお伝えした「8つのキーコンセプト」にあるように、性教育の内容は非常に広くなっています。 「性教育ってこんなにも奥が深くて大切なものなんだ」と思ってもらうために、その内容を簡単にご紹介します。
ぜひともじっくりとご覧いただき、この8つの側面から、お子さまに生きていく上で大切なことを教えるようにされてみてはいかがでしょうか?
人間関係
- 家族
- 友情・愛情・恋愛関係
- 寛容・包摂・尊重
- 長期的な関係性と親になること
価値観、人権、文化、セクシュアリティ
- 価値観とセクシュアリティ
- 人権とセクシュアリティ
- 文化、社会、セクシュアリティ
ジェンダーの理解
- ジェンダー・ジェンダー規範の社会構築性
- ジェンダー平等、ステレオタイプ、ジェンダー・バイアス
- ジェンダーに基づく暴力
暴力、安全の確保
- 暴力
- 同意、プライバシー、からだの保全
- 情報コミュニケーション技術(ICTs)の安全な使い方
健康とウェルビーイング(幸福)のためのスキル
- 性的行動における規範と仲間の影響
- 意思決定
- コミュニケーション・拒絶・交際のスキル
- メディア・リテラシーとセクシュアリティ
- 援助と支援を見つける
人間のからだと発達
- 性と生殖の解剖学と生理学
- 生殖
- 前期思春期
- ボディイメージ
セクシュアリティと性的行動
- セックス、セクシュアリティ、生涯にわたる性
- 性的行動と性的反応
性と生殖に関する健康
- 妊娠と避妊
- HIV/AIDSのスティグマ、ケア、治療、支援
- HIVを含む性感染症リスクの理解・認識・低減
いかがでしたでしょうか?
「誰もが安全に、自分の権利を大切に守って生きていくことができる」世の中を目指した内容になっており、中には「障害のある方などの社会的弱者を守っていこう」という非常にリベラルなものとなっています。
また、ジェンダーの問題も含まれていますし、メディア・リテラシーなども含まれており、生きていく上で大切な自己決定権を述べたものとなっています。
今回は、簡単に「包括的性教育」に関してご紹介させていただきました。 日本ではどうしても「性教育=生理や避妊のこと」という根強いイメージがあるようですし、今の40代以降の方になると「女子だけが性教育を受けていた」というイメージを持たれている方も多いようですが、誰にでも必要なものです。
また、コロナウィルスの影響で日本でも少しずつリモートワークなどが進んでいますが、相変わらず長時間労働が続いており、その影響で、日本は世界的に見ても「父親が子育てに関わりづらい」国となってしまっています。
ハーバード大学の調査によりますと、日本の「子育ては女性の仕事で、男性は外で働くべき」という思い込みは相当根深いものがあり、今後もしばらく続くのでは、とされておりますが、そのような中でこそ、性教育の大切さを今一度見直し、お父さまも子育てに可能な範囲で関わってみて欲しく思います。
お子さまの性教育を通して、ご両親もこれまでの考え方を振り返る機会となります。ぜひ「包括的性教育」について関心をもっていただければ幸いです。