2021年 10月11日

運営事務局

安全なトイレは当たり前じゃない?世界のトイレ事情

皆さんは、トイレがない生活を想像できるでしょうか。日本では、ほとんどの地域で家庭にトイレがあり、公衆トイレも設置されていますね。ショッピングセンターやビルの中にもトイレがあり、気兼ねなく使用することができます。でも、世界を見回すとトイレがあることが当たり前ではない地域があります。今回は、世界のトイレ事情や不衛生なトイレが健康に及ぼす影響などについてお話します。

世界のトイレ事情 

現在、世界の3人に1人はトイレがない状態だと言われています。ユニセフによると、2020年では36億人が安全で衛生的なトイレが使用できない状態です。(2017年のデータでは42億人)このうち4億9400万人はトイレがなく、屋外で用を足しています。(2017年では6億7300万人以上)

そして、屋外排泄※1をしている人のうち92%が農村部に暮らしていることが分かっています。2000年以降、ユニセフをはじめ各国の国際協力によって、世界のトイレへのアクセスは改善されつつあります。

しかし、都市部と農村部との格差は大きいままです。世界の人々のトイレの使用状況調査(2020)では、世界人口の54%(42億人)が安全に管理されたトイレ※2を、24%(19億人)が基本的なトイレを利用している一方で、残りの21%の方が清潔なトイレを使用できていません

※1 屋外排泄:道場、森、海岸、その他の屋外で排泄すること。
※2 安全に管理されたトイレ:排泄物とほかが接触しないように分けられている。あるいは、別の場所に運ばれて安全で衛生的に処理される設備を備え、他の世帯と共有していない改善されたトイレのこと。基本的なトイレ:他の世帯と共有していない改善されたトイレのこと。

トイレがあるだけでは安心できない

トイレがあり、利用できることは大切なことですが、それだけでは十分ではありません。排泄物が安全に処理できることも同じように重要です。

屋外排泄をしている人々は、ビニール袋やバケツに排泄していることがあります。その後、排泄物を適切に処理できないこともあります。糞尿には細菌が含まれているため、そのままにしておくと病気の原因となります。特に小さな子どもは抵抗力が低いため、下痢を原因とした脱水症状を起こし、重症化しやすいといわれています。

感染をおこす経路の4つの「F」 

細菌が体内に侵入する経路を示す「4つのF」があります。

①Finger(手指)

排泄の後に手をきれいに洗わないと、手指についた便の病原菌がそのまま口に入ってしまいます。

②Fluerence(流れ)

トイレがない地域では、川や水のまわりで排泄をすることがあります。同じ川や水のまわりで洗濯や料理をしたり、食器を洗ったりすることがあります。

③Flor(床・地面)

床や地面に排泄してそのままにしているため、病原菌もそのまま残っています。

④Fly(ハエ)

ハエは、排泄物から食べ物などに病原菌を運搬し付着させてしまいます。

このような不衛生な環境では、下痢を起こす可能性が高くなります。特に、抵抗力が低い子どもたちはこのような環境が原因で下痢が重症化します。1日に世界の子ども1600人が下痢で亡くなっています。

今後の課題

ユニセフでは、世界の農村部、自然災害の被災地、難民キャンプなどで衛生的な生活ができるようにトイレを設置する活動を行っています。また、学校に女子トイレを作ることによって、女の子が学校に通い続けられるように支援しています。トイレがないことが人の尊厳にも関わってくるのです。

まとめ

私たちは、トイレがないことによって子どもたちが亡くなることにつながるこの現実を、どのように受け止めたらよいのでしょうか。国連では、11月19日を「世界トイレの日」として世界のトイレの問題を一緒に考えてほしいとユニセフなどの機関を通じて啓蒙を行っています。清潔なトイレを利用できることは幸せであると考えてみる機会にしましょう。

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