
子どもの成長に伴い、デリケートゾーンのケアについて考える機会が増えてきます。しかし、どのタイミングで何をどのように伝えれば良いのか、迷う親御さんも多いのではないでしょうか。
この記事では、「子どもと考えるデリケートゾーンケアの始め方」をテーマに、特に女の子のお子さんの乳幼児期・思春期前・思春期以降に分けて、起こりやすいトラブルやケアのポイントを解説します。正しい知識を身につけることで、お子さんが自分の体を大切にする意識を育むきっかけを作りましょう。

産婦人科医 柴田綾子先生
2011年医学部卒業。妊婦健診や婦人科外来のかたわら女性の健康に関する情報発信をおこなっている。著書に『女性診療エッセンス100』(日本医事新報社)など。
子どものデリケートゾーンでよくあるトラブル

ーーまず、乳幼児期の子どものデリケートゾーンには、どのようなトラブルが起こりやすいのでしょうか。
乳幼児期の場合、便やおしっこで皮膚が荒れることが多いです。特に下痢や胃腸炎の時は頻繁に便が出るので、お尻をこまめに拭いたり、お湯で流したりすると良いでしょう。その後ワセリンを塗ると皮膚を保護できます。どうしても荒れやすいので、薬や保湿剤の使用をお勧めします。小児科などで相談ができますよ。
ーーもう少し大きくなった思春期前の時期はどうでしょうか。
思春期前では、生理が始まる前におりものが増えて驚くことがあります。
個人差がありますが、初経(初めての生理)が平均12歳くらいで、その1~2年前からおりものが出てくることが多いですね。
生理の準備段階で、女性ホルモンが増えることで起こりますが、子どもには「体が成長している証拠だよ」と伝え、吸収性の高いショーツやコットン(綿)の下着などに切り替えると良いでしょう。
また、夏場に蒸れたり、こすれたりしてかゆみが出る場合もあります。多くの場合は、下着をコットン(綿)に変えたり、蒸れにくいズボンやスカートに変えることで自然に良くなることが多いです。かゆみやひりつきに対しては、ご自身でワセリンを塗ったり、産婦人科などで軟膏について相談してください。
かゆみやおりものの異常(黄色や緑色、灰色といったおりものが出る、量が多いなど)が続く場合には、まれにですが異物が性器に入っていたり性暴力被害の可能性も考えられます。このような場合も産婦人科・小児科などで相談が可能ですが、デリケートゾーンの症状や悩みに対して、まず子どもが親に相談しやすい雰囲気を作ることも大切です。
お風呂の時間などを利用して、デリケートゾーンについての洗い方や、生理など体の変化について正しい知識を伝えていくのも良いでしょう。
ーー生理が始まる前におりものが増えてきた際のケアとしては、どのような方法がおすすめですか?
おりものが増えるとかゆみや蒸れで皮膚が荒れることがあります。吸水ショーツやおりものシートを使用するのは良い方法ですね。
ーー思春期以降に起こりやすいトラブルについて教えてください。
思春期以降は、自分のおりものが正常かどうか気になったり、生理不順などの生理のトラブルが目立ちます。突然生理が来てナプキンがなくて困ったり、生理の量や痛みで悩むこともありますね。
子どもの生理痛のケア
ーー子どもの生理痛のケアについても教えてください。
生理痛がある場合、我慢せずに薬局やドラッグストアなどで買える痛み止めの薬を使ってください。痛みを我慢していると学校生活や部活、勉強に影響が出ることがあります。思春期に生理痛が強く出る子は多いので、すぐに使えるようにあらかじめ生理用の痛み止めを家に準備しておくと良いですね。
また、生理用ポーチにナプキンやショーツとともに痛み止めの薬を入れておき、生理痛でつらいときは使うように伝えておくと良いでしょう。
初経を怖がる子への伝え方の工夫

ーー初めての生理の前に不安を感じる子も多いと思いますが、どう伝えれば安心できるでしょうか。
生理の時期には個人差があるので、「生理が来るタイミングが他人と違っても大丈夫だよ」と伝えることが大切ですね。また、出血は病気や怪我ではなく、「子宮の中を綺麗にするためのもの」だと説明することで、ポジティブに捉えられるのではないかと思います。
妊娠に関する話題は、子どもによって受け止め方が異なるので、性教育と絡めるか別で伝えるかは、親御さんが子どもの状況に応じて判断してください。
ーー「生理の出血は子宮の中を綺麗にするため」という表現は、ポジティブに伝わりそうですね。昔は生理が始まると赤飯を炊く風習がありましたが、今の子どもたちはどう感じるのでしょうか?
「体が大人になったお祝い」という考え方自体は良いと思いますが、生理を他人に知られたくない子も多いので、赤飯を炊いて他の家族に知らせるのは、子どもが嫌がる場合は避けた方が良いでしょう。本人が了承している場合は問題ないですが、事前に子どもの意向を確認することが重要です。
子どもへの性器の洗い方を教えるポイント

ーー年齢が上がると、お風呂で自分で体を洗うようになりますが、デリケートゾーンの洗い方をどう教えれば良いでしょうか?
ゴシゴシこすらず、ぬるま湯で優しく洗うことが大切です。「大事なところだから優しく洗おうね」と伝えてください。性器のひだの間には垢がたまりやすいので、指で広げながら優しく洗い流すと良いでしょう。また、腟の中まで洗ったり、スポンジを使って強くこすったりする必要はないと教えてあげてくださいね。
学校での性教育では生殖や妊娠に焦点が当たりがちですが、それ以外にも体の変化があることを学ぶ機会が必要だと思います。
子どもの性器にかゆみがあるときの対処法
ーーもし子どものデリケートゾーンのかゆみがある場合の対処法について教えてください。
子どもの性器周辺のかゆみの原因として、下着やズボンがナイロン製だったりサイズがきつすぎたり、洗剤の影響や、自転車による摩擦などが考えられます。対処としては、肌を保護するワセリンや炎症を抑えるステロイド薬を使用する、肌に優しいコットン製の下着に変えるといった方法を勧めていますね。
性感染症は子どもでは稀なので、もし性感染症の検査が陽性の場合は、性暴力被害の可能性がないか確認することも重要です。ただし、淋菌感染症は性行為で感染するほかに、タオルの共有などでも感染することが分かっています。
ちなみに大人の女性も、更年期を迎えるとホルモンの減少で乾燥やかゆみなどに悩む方が多いんですよ。肌に優しい下着を選んでいただき、悩んだときは婦人科・産婦人科にご相談ください。
子どものデリケートゾーンケアにおいては、年齢ごとに起こりやすいトラブルを理解し、適切なケア方法を伝えることが大切です。また、初経や生理痛に対するサポートも、子どもが安心して成長できる環境づくりの一環といえます。親子でオープンに話せる雰囲気を作り、必要に応じて専門家の力を借りながら、お子さんの体の変化を見守っていきましょう。性教育は単に知識を与えるだけでなく、自分の体を大切にする意識を育むことにもつながります。
〇ライタープロフィール
きのコ
東京を中心に多拠点生活する物書き。マッチングサイト会社の広報。すべての関係者の合意のもとで複数のパートナーと同時に交際する「ポリアモリー」として、恋愛やセックス、パートナーシップ、コミュニケーション等をテーマに発信している。不妊治療の経験や、子宮筋腫による月経困難症からの子宮全摘出をきっかけに、女性の身体と健康に興味をもつようになった。子無しでバツイチ。著書に『わたし、恋人が2人います。〜ポリアモリーという生き方〜』。