月経(生理)が定期的にこなかったり、期間が長い・量が多いといった異常に悩む方は多いのではないでしょうか?
今回は助産師の前田陽子先生に、月経不順とその原因についておうかがいしました。
皆さんはご自分の月経について関心を持っていますか?
月経は女性の健康状態を教えてくれる大切な現象ですので正しい知識を持っていただきたいと思います。
今回は月経不順についてお伝えしていきますが、まず月経について簡単に説明してから、「月経不順」「月経不順の原因」「月経不順に隠れている疾病」についてお伝えしていきます。
まずは知っておきたい月経のしくみ
月経は、月にだいたい1回の間隔で起こる子宮内からの出血です。
女性は赤ちゃんを宿す準備として、月経周期の初めに「子宮内膜」という赤ちゃんのベッドのようなものを子宮内に作り始めます。月経周期の真ん中くらいに「排卵」があり、排卵を境に受精卵がいつ来ても良いように子宮内膜を維持します。しかし、妊娠しないとその子宮内膜は必要が無くなり古くなるために剥がれ、血液や腟の分泌物とともに子宮の外へ排出されます。これを「月経」(「生理」という呼び方が一般に広がっていますが、正しくは「月経」)と言います。
月経周期の正常範囲は25~38日
月経周期とは、月経の始まった日を1日目として、次回の月経が始まる前日までの日数のことをいいます。月経は毎月1回同じ日に始まるのが正常と思われている人もいますが、月経周期の正常範囲は25~38日なので、同じ日に始まるとは限りません。
例えば6月1日に月経が始まって、次の月経が6月26日からだったとしたら月経周期は25日です。この場合、1か月に2回月経があることになりますが異常ではありません。
月経不順には月経持続期間・月経量の異常も含まれる
月経周期は、前述したように25日~38日が正常なので、24日以内または39日以上の場合を月経不順と判断します。しかし月経周期が正常範囲内であっても、周期の変動が大きい場合は異常です。変動の正常は6日以内なので、7日以上の場合は月経不順です。
例えば、今回の月経周期が25日で次の月経周期が32日だとしたら、変動は7日なので月経不順となります。毎回の月経で変動が7日以上だったり、周期がバラバラな場合は月経不順ですが、1回だけ変動が大きいかったくらいでは月経不順とは言い切れませんので、経過を観ることが必要になります。
月経不順には、月経持続期間・月経量の異常も含まれます。月経の持続期間の正常は3日~7日なので、2日以内や8日以上は異常と判断します。また、月経量は主観的になるので判断が難しいですが、おりものシートで足りるくらいの量だったら少ないですし、反対に1時間おきにナプキンを替えても足りないくらいの量は多いと考えてください。月経量が多い場合はレバーのような塊が出ることもあります。
月経不順の原因は「ホルモンバランスの乱れ」
月経不順の一番大きな原因は「ホルモンバランスの乱れ」です。月経は卵巣から分泌される女性ホルモンによってコントロールされて、定期的に繰り返されます。
女性ホルモンは、脳から分泌されるホルモンが卵巣に作用することで分泌されるので、月経不順の原因は、子宮や卵巣機能に原因があるだけではなく、不規則な日常生活や仕事・人間関係の悩み、極端なダイエットなどのストレスが脳に影響して、脳からのホルモン分泌が上手くできずに引き起こしていることも多くあります。
月経不順に隠れている疾患
初めての月経(初経)から数年の思春期(※1)は、女性ホルモンのバランスが安定しないために、月経周期がバラバラだったり月経が3カ月以上、無かったりすることがあります。しかし、18歳頃になっても状態が変わらないのは、体に何らかの問題があることがあります。
ホルモンバランスが安定しないまま放置していると、不妊の原因になったり、更年期のような症状が出現してくることもあります。また、月経が無くて楽と思っていたら「妊娠していた」ということもあります。
更年期(※2)は、女性ホルモンの分泌が低下して閉経を迎える時期なので、思春期と同様に月経周期が安定しなかったり、3カ月以上月経が無かったのに、また始まるということがあります。更年期でも月経がある間は妊娠の可能性もあります。性行為があり、3カ月以上月経がない場合は、妊娠の可能性も考える必要があります。
思春期や更年期のような、生理的な理由での月経不順(思春期は18歳までくらい)は問題ありませんが、月経不順の陰には、次のような異常が隠れていることがあります。
(※2)思春期とは、8~9歳頃から17~18歳頃までのこと。
(※3)更年期とは、閉経を挟んだ前後5年の10年間のこと。日本人の閉経の平均は50歳頃なので、更年期は45歳頃~55歳頃のことをいう。
脳下垂体の異常
下垂体から出るホルモンが卵巣に働きかけていますので、下垂体の異常が女性ホルモンの分泌を不安定にして、月経不順となることがあります。
卵巣の疾患
卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)や多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)、卵巣がんなど、卵巣の疾患によって卵巣機能が低下している場合があります。
甲状腺機能の異常
甲状腺から分泌されるホルモンは女性ホルモンの分泌にも関係していますので、甲状腺が正常に機能しなくなると月経不順を引き起こします。
高プロラクチン血症
プロラクチンは母乳を分泌させるためのホルモンです。飲んでいるお薬などの影響でプロラクチンが高くなり、月経不順が起こることがあります。また、授乳期間中は、このホルモンによって卵巣機能が抑えられるために、月経不順(無月経)となります。
疾患
月経の持続期間や月経量の異常の原因は、卵巣だけではなく、子宮筋腫や子宮腺筋症などの疾患が関係していることも考えられます。
月経不順を放っておかないで
一言で「月経不順」と言ってもこのような色々な原因があります。
私の公式LINEへの相談で一番多いのが月経についてです。具体的には「月経が来ないのですが妊娠したのでしょうか?月経不順なので分かりません。」という内容が一番多いです。このことから、月経不順を放置している方がかなり多いのではないかということが予測されます。
妊娠かどうかについては、妊娠検査薬を使う時期や方法についてお伝えしますが、妊娠反応が出なくても産婦人科に受診することをお勧めしています。実際に受診された方の結果が「無排卵」だったということがありました。
もし、受診せずに無排卵だということにずっと気が付かないままになっていたら、不妊症や若くして更年期症状に悩まされることになっていたかもしれません。月経不順は「ただ月経が不規則なだけ」ではなく、女性にとっては重要な意味があることと理解していただきたいです。
月経不順についてご理解いただけたでしょうか?
次回の記事では、月経不順の対処方法についてお伝えしますので、今回の記事を参考になさって、ご自分の月経の状態と照らし合わせておいてくださいね。