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幼い頃からの性教育、何から始めたらいい?

家庭で子どもに性教育をする際、何から始めればいい?どうすればいい?と悩む方も多いはず。幼い頃から家庭でできる性教育ってどんなことでしょうか?と、性教育コンテンツ制作ユニット・アクロストンさんに聞いてみました。「性教育って特別な知識が必要なんでしょ?難しそう!」と諦める前に、ぜひお読みください。

監修・話題提供

アクロストン
妻・夫である2人の医師による性教育コンテンツ制作ユニット。楽しく性について学べる授業やワークショップを日本各地で開催。家庭ではじめられる性教育のヒントや性に関する社会問題についてなどをSNSで発信している。
著書:10歳からのカラダ・性・ココロのいろいろブック(ほるぷ出版)、3から9歳ではじめるアクロストン式 「赤ちゃんってどうやってできるの?」、いま、子どもに伝えたい性のQ&A(主婦の友社)など


性について楽しく学ぶ、アクロストンさんの活動

ーー「性教育コンテンツ制作ユニット」ということですが、どういった活動をしているのでしょうか?

子どもや親子で参加できる性教育のワークショップや、保護者向け講座、学校での授業、本の執筆などですね。

今(※編集部注:取材時の2022年時点)、上の子が中学1年、下の子が小学5年ですが、上の子が産まれて少しした頃にスマホやタブレットが普及し始めました。

自分の調べ物をしていた時に、性と関係のない事柄について調べているにも関わらず、アダルトコンテンツの広告バナーが出てくることが頻繁にありました。子どもが同じようにスマホやタブレットで調べ物をしたとして、初めて性に出会うのが、本人が望んでいないタイミングかつ暴力的な内容になりえるということに気付いたんです。

性は、本当は暴力的なものでも歪んだものでもなく、豊かに生きていくために必要で、知識を身に着けることは大切なことだと思います。なので、子どもにそういったことを伝えるにはどうすればいいかと思って性教育の絵本を探しました。ですが、当時その選択肢としてはあまり多くなく、「無いなら自分たちで作ろう」と、工作をしながらワークショップで学べる絵本を作ったんです。

周りに「伝えたいけどどう伝えたらいいのか分からない」という保護者が多かったので、ワークショップを始めたのが活動を開始したきっかけですね。 その後、学校での授業の依頼をいただいたり、ワークショップの種類を増やしたり、ご要望に応えて保護者向けの講座をやったりと、少しずつ活動が広がっていった感じです。

日本の性教育の現状と家庭でできること

ーー現在日本の学校で行われている性教育はどういった内容なのでしょうか?

狭義の性教育の話をするなら、保健体育の授業で習う事柄が該当します。小学校では第二次性徴生理や射精について、中学校では妊娠の過程性感染症予防避妊について扱います。しかし、はどめ規定と呼ばれるものがあり、性交そのものは扱わないため、性感染症予防や避妊について子ども達が正しく理解するのは難しい状況です。

それぞれのトピックに使う授業時間数も少なく、欠席した場合は、その内容について学校で学ぶ機会がありません。出席していても、短い時間でからだの仕組みのみを学ぶようなことが多く、たとえば小学校4年生で扱う生理や射精について、小5、小6の子に聞いてみると名前も覚えておらず、どんなものかもわかっていないことがよくあります

性教育をより幅広くとらえる「包括的性教育」と考える場合は、上記に加えて人との関係の築き方なども含まれますが、まだまだ日本の性教育では十分に行われていません。

なお、現在の小学4年くらいの保健体育の教科書には「異性が気になり出します」という記述もあり、異性愛が前提になっています。

時間数が圧倒的に少ないので扱える内容が少ない、ひとつひとつのトピックを丁寧に扱えないという課題もあります。 本来は公教育で性教育を行うべきだと思いますが、「家でできる人はおうちで性教育やっていきましょうか」「家での性教育はこういうふうにしたらいい」というスタンスで発信しています。

ーー家で性教育をやっていきたいという方はどんな取り組みをするといいでしょうか?

家庭での性教育は、人との関係性の作り方について、「人と人は対等」ということを日常生活の経験を通して伝えていくことが大切だと思います。

普段の親子関係でも、親が一方的に子どものことを決めるのではなく、あなたの意見をちゃんと受け止めている、対話をして物事を決めていくということを繰り返して、対等な関係性を築くことを伝えます。

また、自分と他の人の間には境界(バウンダリー)があって、それを超える時には同意が必要なんだということも日々の中で伝えていく。お風呂に入る時にまだ自分で服が脱げない子に、無言で脱がせてお風呂に入れるのではなく、「今からお風呂だからお洋服脱がせていい?」と聞いてからやるなど、ひとつひとつの生活のシーンで同意を取っていきます。このような積み重ねを通して、お互いを尊重する意識を育むことにつながっていきます。

大人が「恥ずかしさ」を乗り越えるには

ーー性について、子どもと話題にする時に、大人が恥ずかしがるような態度を取っていると、子どもにもそれが伝わって変な空気になってしまうこともあると思います。大人が性についての恥ずかしさを乗り越える方法はありますか?

何か特別なテクニックや方法論はありませんが、慣れることが大切です。セックスという言葉も、言い慣れないと気恥ずかしいですが、何度も言っていると普通に普段通りのトーンで言えるようになりますよ。

同じ小学生でも、低学年と中学年は違います。低学年はまだ素直に質問をしてきますし、性器周りのトラブルも普通に言ってきます。「おちんちんかゆい」とか。低学年は「なんで赤ちゃんは生まれるの」も普通に聞いてきます。それくらいの子には、恥ずかしがらずに答えて問題ありません。

その時に咄嗟に答えられなければ「調べて日曜日に答えるね」と先延ばししてもいいです。ただし、約束した日に「じゃあ一緒にこの本見読もうか」「このサイト見ようか」でもいいのできちんと回答することが大事です。

わが子への性の話は一回きりではありません。何度でもできるので、一回で頑張ろうとせず、できることからちょっとずつやっていこうという考え・姿勢でいいのではないでしょうか。

ーー小学校中学年以降、思春期が始まってからはどうでしょうか?

中学年以降は、その子によって思春期の始まりが違うので一概には言えませんが、それ以前に性の話を家庭でしていなければ、子どもが親に言ってくることはほとんどなく、親としてもいきなり言い出しづらくなるかもしれません。そこでお勧めしているのは、性教育系の漫画などをリビングに普通に置いておくことです。

中学生になると親の前で性についての本を読むことに抵抗感を持つ子もいますが、親がいないときに手に取ることがあります。そういったやり方で生活の中に性の話題をじわじわ入れていく方法はオススメです。

また、テレビや映画には性に関することが色々出てきます。例えば、公園で無理矢理キスをしている場面で「あのキスって嫌じゃないのかな」と親がつぶやく感じで突っ込む。私たちは「ツッコミ性教育」と呼んでいます。子どもは親の話を聴いて「ああいう強引なキスはダメなのか」と学んでいきますし、「うちの親、意外とそういう話題するんだ」ということも伝えられます

また、ジェンダーの話をする時に、たとえば、国会中継を一緒に観て「おじいさんばっかりで、なんでここに女性がいないんだろうね」と話す、「ニュージーランドの首相は、首相の間に赤ちゃんを産んでね」と話す、といったこともよくやっています。テレビを観ながら突っ込むのも良いと思います。

セックスや妊娠の仕組み、どう伝える?

ーーセックスや妊娠の仕組みを伝える際、どうしたらいいでしょうか?

隣に並んで座って、一緒に動画を観る、サイトを見る、本を読むなど、同じものを一緒に見ながら話すといいです。 「全部教えよう!」と考えて臨むと、教師と生徒のような関係になってしまいますが、対等な関係性の中で話をしたほうがいいので、一緒に読んで一緒に学ぶつもりでやると、気が楽だと思います。

ーーセックスや妊娠の仕組みを伝えた後の子どもたちの反応はどんなものがありますか?

反応はその子によって様々ですね。もともと体の仕組みの話が好きな子はこういった話に興味を持ちますが、そういう興味がない子はつまらなそうにします。

興味のある子にはどんどん伝えればいいですが、興味が無さそうな子には、またいつか折を見て話そうと切り上げていいと思います。子どもは分かってないことも色々あるので、繰り返し何度も話して伝えてほしいです。

親が聞かれて一番困る質問が「パパとママもセックスしたの?」「私もこう生まれたの?」です。これを聞かれた場合、「性のことはプライベートだから答えたくない」なのか、「答えてもかまわない」なのか、親自身が決めればいいです。「そうだよ」と言ってもいいと思うなら言えばいいし、「性のことは人に言うのは嫌だな」と思ったら、「セックスのことや性のことは個人的なことだから、どんなに仲が良くても、親子でも言わないようにしているんだ」と言えばいいです。

いきなり聞かれると答えに窮するので、自分がどっちのスタンスなのか、子どもに聞かれたらどう答えようか、予め考えておくと安心でしょう。


いかがでしたか? 家庭での性教育の始め方、イメージはついたでしょうか?ぜひ、特別なことと気負いすぎず、普段のやり取りの中でできるところから始めてみてはいかがでしょうか?

取材・執筆
柳田正芳 from 性の健康イニシアチブ/6483works
「誰もが自分は自分に生まれてよかったと思える世界」を作るために「どこに行っても性の健康を享受できるように社会環境をアップデートすること」を目指す性の健康イニシアチブの代表。2002年から国内外の性教育、性科学の様々な活動に参加してきたほか、思春期保健や両親学級などの活動も経て現在に至る。
また、編集/校正業、執筆業、Webメディアディレクション業などを業とするライティングオフィス・6483worksの代表としても活動。インタビュー記事の制作を得意とする。
HP:https://masayoshiyanagida.tokyo/profile

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