女性のライフサイクルのなかで、誰にでも訪れる「更年期」。更年期にはホットフラッシュなどの分かりやすい症状だけではなく、”なんとなく不調”といった状態に悩む人も多いものです。
今回は更年期の症状に対しておうちやオフィスでできる体操や有効なツボ、それでもしんどい場合の病院の受診について、NPO法人ちぇぶら代表理事・更年期トータルケアインストラクターの永田京子さんにお聞きしました。
永田京子 / NPO法人ちぇぶら代表理事・更年期トータルケアインストラクター
1,000名を超える女性たちの調査や医師の協力を経て “更年期対策メソッド”を研究・開発・普及。口コミで広まり、企業や医療機関などで講演を行い述べ3万人以上が受講している。著書「女40代の体にミラクルが起こる!ちぇぶら体操(三笠書房)」、「はじめまして更年期♡(青春出版社)」。メノポーズカウンセラー。YouTubeの登録者は3.6万人以上。
おうちでできる体操、オフィスでできる体操
ーーなんとなく不調な時に、おうちでの家事の合間にもできるおすすめの体操を教えてください。
いろんな体操があるんですけれども、私たちNPO法人ちぇぶらでおすすめする「ちぇぶら体操」をご紹介します。団体名の「ちぇぶら」は、更年期を前向きに捉えた英語「the change of life」の意味。すごく簡単で、体調が悪い時でもいい時でもすぐにできて、なおかつ自律神経を整えて、とてもリラックスできる体操です。
ちぇぶら体操のやり方
鼻から息を吸ってお腹をぷくっと膨らませつつ、斜め上を向くようにします。
口から息を細く長く吐き出しながら、顎をぐっと引いて首の付け根をストレッチします。呼吸と連動させて、首を上下に動かしていきます。
たったこれだけなんですけれども、数回やると思わずあくびが出たり、とてもリラックスして怒りも静まるような効果が期待できます。
なぜかというと、私たちの神経の束は脳から繋がって背骨の中を通っているんですが、その副交感神経というリラックスする神経の根っこの部分が首の付け根に集約されているんですね。深呼吸だけでも自律神経を整える効果があるんですけれども、呼吸と連動させて首の付け根を動かすことで、短時間でもかなり質の高いリラックス効果が得られます。
ーーこの体操を知っているとお守りになりそうですね。
そうですね。不調な時以外にも夜寝る前とか、すごく緊張してしまって「もう心臓飛び出そう」みたいな時とか、イライラしている時やリラックスしたい時などにおすすめです。
ーーオフィスでもできる体操はありますか?
はい。オフィスでもできる体操もすごくたくさんあるんですけれども、よく喜ばれるのは、肩こりを予防する体操です。
オフィスでできる肩こり予防体操のやり方
両方の手を肩の上に乗せて、円を描くように大きく肘を回します。肩甲骨周りを上下左右に動かすような感じです。次に逆方向にもしっかりと、10回程度ずつ回します。回していると、おそらくだんだん腕の付け根の三角筋がきつい感じがしてくると思うんですが、ここの筋肉も鍛えられると肩こり知らずになります。
そして最後の仕上げで、これがポイントなんですが、両方の手を前に伸ばします。その手をクロスして、手のひら同士を合わせます。肩が痛い場合は無理しないでください。できる方は、その腕を頭上方向に伸ばす。さらにできる方は、頭をくぐらせて、後頭部で二の腕をグッと押して10秒キープ!
そして手をゆっくりほどくと「流れた〜」という感じがすると思います。
肩甲骨周りの筋肉を動かして肩周りに溜まっている原因の老廃物を浮かせて、手を上にあげてクロスしてキープすることで、プチ加圧状態を作ります。この腕をほどくと血液がいつもよりも勢いよく流れるので、肩周りに溜まってるこの老廃物を根こそぎ流し出すことができます。
――たしかに、重たく感じがちな肩がスッキリするような気がします。
更年期の時期に肩こりがひどくなる人もいます。女性ホルモンには、血流をよくしたり血管を強くしなやかに保つ役割があるんですが、それが低下してくるといつもよりも血流が悪くなって、肩周りに老廃物が滞りやすくなってしまいます。さらに運動不足だったり同じ姿勢が続くと、もう石を背負っているみたいにひどい肩こりになりやすいんですけれども、こまめに動かすことでかなり快適に過ごせます。
肩こり解消といったんですが、血流をよくすることで、耳鳴りの予防や解消にもおすすめの体操です。
肩こり解消|40代からのコリの原因、血流をよくする体操(働くを健康に「ちぇぶら体操forビジネス」)
更年期の症状に効くツボ
ーー普段のケアとして「こういったツボがこの症状に効く」というのがあれば教えてください。
女性ホルモン全般・更年期症状に関していうと、足のツボがすごくおすすめです。
足の内くるぶしから指4本分上にある「三陰交(さんいんこう)」や、足の内くるぶしから骨の際に沿って上がっていって、膝の下あたりで指が止まるところにある「陰陵泉(いんりょうせん)」というツボです。また、太ももの内側にある「血海(けっかい)」というツボは、押すと全身の血流もよくなりますし、女性全般の不調を緩和するといわれています。
ただやはり、ツボ押しに慣れてない人がピンポイントで押さえるのはなかなか至難の技です。難しい場合は、足の内側に女性の健康にいいツボがたくさんあるので、その辺りを手のひらで広く押すのでもOKです。
よくテレビで見るような「痛いけど、我慢!」みたいなツボ押しはしなくて大丈夫です。自分が気持ちいいと思うくらいの圧がいいと思いますよ。
ーーマッサージ的に、自分にとって心地いい強さで押すのがいいんですね。
そうですね。あと、ホットフラッシュの汗を止めるツボが2つあります。
ひとつは「屋翳(おくえい)」という、鎖骨の真ん中とバストトップのちょうど中間地点にあるツボです。あと「大包(だいほう)」という、みぞおちから真横に行って脇の下から降りてきて交わるところにあるツボですね。
ここが特に顔の汗を止めるツボといわれています。よく舞子さんとか舞台役者さん、顔に汗をかいて化粧が流れたら困る人が帯をここにグッと巻いたりするんです。会議中で「今汗だくになったらまずいぞ」という時は、腕を組んで考えるふりをして、親指で屋翳や大包を押さえてみてはどうでしょうか。
ただ「半側発汗」といって、人間って汗を止めるとその分、別の場所から汗をかくようにできているといわれています。なので、顔の汗を止めている間は、お腹回りや背中に汗をかきやすくなります。
ホットフラッシュ|汗を一瞬でとめるツボ【更年期障害対策ケア】
体操やツボ押しでもしんどい時には病院へ
ーー簡単にできる体操やツボ押しをいくつか教わったんですが、それでもしんどい時にはどうしたらいいでしょうか?
不調は我慢しすぎず、治療法もあるので、病院に行くのはすごく大事な選択肢だと思います。更年期の不調で行く科は婦人科ですね。
ただ、更年期ってさまざまな不調が起こるんですよ。
たとえばうちの母の場合だと「目が乾く」という症状があって。でも「目が乾いたんです、先生」って婦人科には行かないじゃないですか。それで、眼科でもらった飲み薬が、喉の奥にくっついて飲み込めなかったんです。でも「薬が飲み込めないので、婦人科に行きます」ともならないですよね。それで耳鼻科に行って、皮膚に湿疹が出たら、皮膚科に行って…。こういった行動は「ドクターショッピング」といわれて、現代女性に非常に多い行動パターンなんです。
もし、何か特定の症状が強く出ている場合は、それを見てもらえる科に第一選択肢として行くことが考えられます。しかし、病気ではなかったり、治療を続けてもあまりよくならず、閉経前後である時には、女性ホルモンの低下が影響しているのかもしれません。その場合は婦人科で診てもらえます。
更年期の不調だと思っていたら甲状腺の病気などが隠れている場合や、更年期以降は生活習慣病のリスクも高まりますから、不調が続く場合は我慢せずに受診しましょう。
ーー婦人科に行く判断をどのようにしたらいいのか、少し難しいと感じる人もいますよね。
そうですよね。あと、婦人科だとわかっていても、どれぐらいの不調から行けばいいのか悩んだり、「これくらいのことで我慢が足りない」とか怒られたらどうしよう、と不安になることもあるかもしれません。
そういう時に、簡略更年期指数のチェックシートは客観的に見る目安になると思います。
チェック項目に更年期の不調が書いてあって、自分の体感値としてそれがどういう風にどれくらいつらいのか、強・中・弱・無みたいな感じで表示が書かれているんです。それを自分でチェックしていって、50点以上だったら、病院受診の目安ですね。
つらければ別にチェックシートを使わなくても病院に行っていいと思うんですが、判断に迷ってしまう時は、それを使うのも1つの手かなと思います。
閉経の前後約10年という長い期間、付き合っていくことになる更年期。
さまざまな症状があり、またその重さ・軽さも千差万別です。症状に合わせて、体操やツボ押しなど自分でできることから病院の受診まで、適切な対処をしていきたいものですね。
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更年期は体調の変化だけではなく、家族や職場の人間関係などでも悩みが多い時期かもしれません。こんな風なつらさがあった、こんな風に向き合いやり過ごした、周りの人からこうしてもらえて助かった、など、みなさんの体験談やあるあるを募集します。いただいたエピソードはツキとナミ編集部にて一部記事の中でもご紹介させていただけたらと思います。
〇ライタープロフィール
きのコ
群馬を中心に多拠点生活をする文筆家・編集者。すべての関係者の合意のもとで複数のパートナーと同時に交際する「ポリアモリー」として、恋愛やセックス、パートナーシップ、コミュニケーション等をテーマに発信している。不妊治療や子宮筋腫による月経困難症をきっかけに、女性の身体との向き合い方に興味をもつようになった。子無しでバツイチ。著書に『わたし、恋人が2人います。〜ポリアモリーという生き方〜』。