運営事務局

子どもに「ジェンダー平等」を伝えるために、家庭でできることって?|家庭教育研究家 田宮由美先生

男女共同参画社会基本法の施行など大きく転換しつつある社会情勢の中で、ジェンダー平等であることは当たり前になりつつあります。

しかし、日常生活の中ではまだまだ「男らしさ」や「女らしさ」が求められる場面に出くわすことがありますよね。これからのジェンダー平等の社会で生きていく子どもを育ていくうえで、親はどのようなことに気をつければよいか、現役ママライターが家庭教育研究家で家庭教育協会「子育ち親育ち」代表の田宮由美先生にお聞きしました。


「男の子だから」や「女の子だから」という価値観

まだまだ

「男の子なのだから、メソメソ泣かないの」
「女の子なのだから、お料理を手伝って」

なんて、日常のふとした時に口をついてしまうお母さんやお父さんも多いですよね。現役の親世代の人たちにも、ずっと昔から脈々と受け継がれてきてしまった性を区別する価値観が根付いてしまっている部分はあると思います。

しかし、これからの時代は男の子だから、女の子だからではなく、個性としてそれぞれの考えや行動を認めることが大切です。

時代に沿った価値観や教育ですから、お母さま世代の方が「男の子だから、女の子だから」とそういう価値観を持ってしまっても仕方ない部分はあると思います。幼い頃から、男らしさや女らしさを言い聞かせると、子どもの心の中に浸透してしまいます。お母さまが実際、そうなのだと思います。

「性別らしさ」に合わない自分を責めてしまう

特に幼い子どもは、養育者がいないと生きていけないということを本能的に感じています。誰に教えられるわけでもなく、自分にとって何にも代えがたいものだとわかっているのです。そのような何物にも代えがたい親に、幼い頃から男らしさや女らしさを刷り込まれると、子どもはどのように育つでしょうか。

例えば、娘さんならどうでしょう?男性でありながら女々しい行動や考えをした時、女性でありながら男性のようなふるまいをした時、「男らしくないから、女らしくないから自分は親に認められない。自分はダメな人間だ。」そんな発想や感情に陥り、自尊感情が低くなってしまいます。

そして自尊感情が低さは、そのまま自信のなさにつながり、勉強や仕事、人間関係などさまざまな物事に消極的になってしまいます。ふとした日常の何気ない親の言葉が、子どもの未来の価値観を狭めてしまう可能性があるのです。

「男の子だから」「女の子だから」と口に出す前に気づこう

ですから、できることをまず一歩。何気なく言ってしまいがちな「男の子なのだから」や「女の子なのだから」の一言を口に出す前に、気づいて言わないようにすることが大切です。

大丈夫、きっとできますよ。なぜならあなたは、もう自分自身の価値観の所在に気づいているのですから。きっと口に出す前に気づくことができるはずですよ。


「男らしい」「女らしい」という価値観を次世代に持ち越さない

いかがでしたか? 田宮先生のお話を聞いて、娘がいる親が、「女の子なのだから自分のお部屋くらい綺麗にしてよ!」と言うことがあるのですが、よく考えたら…いやよく考えなくたって、男の子だって部屋をきれいにするべきですよね。

女の子だけど、女らしくないとされる行動をした時に、性別を理由に責められたら、自分自身を責めて、自信をなくしてしまいそうです。子どもにとって何よりも身近な存在である親が、まず価値観を変えていかないといけません。

とは言っても、年齢を重ねてから価値観を軌道修正するのはなかなか骨が折れそうです。理屈ではわかっていても、なかなか自分の価値観をひっくり返すことは難しいですよね。何気ない一言にも気を付けて、「男らしい」「女らしい」という価値観を次世代に持ち越さない。それが私たち親のできることですね。

この記事を書いた人

ツキとナミ運営事務局

この作者の記事一覧

同じカテゴリー の他の記事

  1. パートナーとのすれ違い、なぜ起こる?どう対策する?

    夫婦のよくある悩みに、「パートナーとのすれ違い」があります。すれ違いはどうして起こるのか、回避するにはどうすればいいのか、こんなすれ違いの場合はどう考えて対応したらいいの?をまとめました。 執筆 柳田正芳 「誰もが自分は自分に生まれてよかったと思える世界」を作るために「どこに行っても性の健康を享受できるように社会環境をアップデートすること」を目指す性の健康イニシアチブの代表。2002年から国内外の性教育、性科学の様々な活動に参加してきたほか、思春期保健や両親学級などの活動も経て現在に至る。プロフィールサイトはこちら 夫婦がすれ違う原因の多くは、お互いに思っていることのすり合わせ不足 私は、「夫婦のコミュニケーション」について考えるワークショップの講師として、もうすぐ子どもが生まれてくるというタイミングに差し掛かった夫婦延べ1,000組以上と会い、話を聴いてきました。 多くの夫婦との出会いを通じて感じていたことがあります。それは、よくある夫婦のすれ違いの原因は、お互いの思っていること・考

    もっと読む
    2023年 01月27日
    #コミュニケーション
  2. もし子どもがLGBTかも?と思った時には?

    6歳の子どもの母です。子どもは体の性別は男性ですが、プリンセスになりたい、髪を伸ばしたいと言っており、もしかして性同一性障害ではと思っています。これから小学校に進学することもあり、子どもや周囲とどのように接するのがいいのでしょうか。(30代女性・6歳の子どもの母) 「自分の子どもが性のあり方に悩んでいるかも……」と思った時、どんな対応ができるのでしょうか?今回は、性別違和を抱えている可能性のあるお子さんをもつお母さんからご相談をいただきました。こういった場合の本人との関わり方、学校との調整の仕方、保護者の相談先などについて、性的マイノリティの子ども・若者の支援をおこなう一般社団法人にじーず代表の遠藤まめたさんにアドバイスをいただきました。 監修・話題提供 遠藤まめた 1987年埼玉県生まれ。一般社団法人にじーず代表。トランスジェンダー当事者としての自らの体験をきっかけにLGBTの子ども・若者支援に関わる。近著に「教師だから知っておきたいLGBT入門 ―すべての子どもたちの味方になるために」(ほんの森出版)。 親と本人の悩みを受け止める

    もっと読む
    2023年 01月13日
    #コミュニケーション
  3. 子どもに「LGBT」をどう伝える?【後編】

    さまざまな性的マイノリティのうち、代表的な「レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー」の4つの頭文字をとった総称「LGBT」。前回は、さまざまな性のあり方やその伝え方について、一般社団法人にじーず代表の遠藤まめたさんにお伺いしました。そして、子どもがもし「ホモ」「オカマ」などと発言していたら、皆さんだったらどう反応しますか?今回はLGBTについて子どもに話し始めるきっかけや、もし差別的な発言をした場合の対応についてお話しいただきました。 遠藤まめた 1987年埼玉県生まれ。一般社団法人にじーず代表。トランスジェンダー当事者としての自らの体験をきっかけにLGBTの子ども・若者支援に関わる。近著に「教師だから知っておきたいLGBT入門 ―すべての子どもたちの味方になるために」(ほんの森出版)。 子どもに話し始めるきっかけ ーーLGBTについて子どもに教える時に、話し始めるきっかけはどうすればいいか、お伺いしたいです。 最近すごくいい絵本がたくさん出ているんです。 たとえば子どもで

    もっと読む
    2022年 12月27日
    #コミュニケーション
  4. 子どもに「LGBT」をどう伝える?【前編】

    最近「LGBT(いわゆる性的マイノリティ)」や「性の多様性」について、ニュースやドラマ等を通して知る機会も増えてきたのではないでしょうか。子どもが成長していく時には、その子自身の性のあり方はもちろん、他人も尊重することについて、LGBTに関する正しい知識と共に伝えていきたいものですよね。今回は子どもに「LGBT」について伝える方法について、一般社団法人にじーず代表の遠藤まめたさんにお聞きしました。後編では、子どもに話し始めるきっかけについて考えます。 遠藤まめた 1987年埼玉県生まれ。一般社団法人にじーず代表。トランスジェンダー当事者としての自らの体験をきっかけにLGBTの子ども・若者支援に関わる。近著に「教師だから知っておきたいLGBT入門 ―すべての子どもたちの味方になるために」(ほんの森出版)。 多様な性のあり方とは ーーまず、LGBTについて、子どもにどう説明したらいいでしょうか? 人間の性のあり方は4つの要素の組み合わせによって作られています。

    もっと読む
    2022年 12月09日
    #コミュニケーション
  5. 男の子の子育て!ジェンダー平等の意識を育むには?

    世界146ヵ国中116位。日本のジェンダーギャップ(男女格差)は「先進国の中で最低レベル」「アジアの中でも順位が低い」ということが、世界経済フォーラムが発表した「ジェンダー・ギャップ指数2022」から見て取れます。 「わが子が大きくなる頃には、男女の格差が改善していてほしい」と思う方は少なくないと思います。男女の格差を生み出す(また、許容する)社会環境は、ひとりひとりの心がけ次第でいい方向に変えていけるはずです。男女の格差に敏感で、そういうものにNOと言えるようにわが子を育てるにはどうすればいいのでしょうか?文筆家の清田隆之さんに聞きました。 監修・話題提供 清田隆之 文筆業、恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。「恋愛とジェンダー」をテーマに様々な媒体で執筆。著書に『さよなら、俺たち』(スタンド・ブックス)『自慢話でも武勇伝でもない「一般男性」の話から見えた生きづらさと男らしさのこと』(扶桑社)など。新刊『どうして男はそうなんだろうか会議――いろいろ語り合って見えてきた「これからの男」のこと』(澁谷知美さんとの共編著/筑摩書房)が発売中。Twitter→@momoyama_radio 編集部から「ジェンダー」とは、文化的・社会的な性差を指します。社会の中で取り決められた「男性・女性とはこういうもの」と期待される役割分担意識や差異を言います。例えば、「男性は家庭の外で働いてお金を稼いで家族を養うもの

    もっと読む
    2022年 12月02日
    #コミュニケーション
  6. SNS時代に男性が抱える生きづらさとは?

    これまで、可視化されることや、気に留められることがほとんどなかった「男性の生きづらさ」。SNSでも男女間の不平等や格差の話題において、「女性のほうが不利な立場に置かれているのだから、男性の生きづらさなんてないでしょう」という見方もありますが、男性が自らの生きづらさに向き合うことで、男女の不平等や格差の解決への一歩になるのではないかという考えもあるようです。文筆家の清田隆之さんに伺いました。 監修・話題提供 清田隆之 文筆業、恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。「恋愛とジェンダー」をテーマに様々な媒体で執筆。著書に『さよなら、俺たち』(スタンド・ブックス)『自慢話でも武勇伝でもない「一般男性」の話から見えた生きづらさと男らしさのこと』(扶桑社)など。新刊『どうして男はそうなんだろうか会議――いろいろ語り合って見えてきた「これからの男」のこと』(澁谷知美さんとの共編著/筑摩書房)が発売中。Twitter→@momoyama_radio 昔からあった問題がSNSにより注目されやすくなってきた ――男性が女性に対して差別的なことを言って炎上したり問題になったりすることが少なくないように思うのですが、最近の事例や傾向などはあるでしょうか? 昨

    もっと読む
    2022年 11月28日
    #コミュニケーション
同じカテゴリー の記事をもっと読む
TOP