思春期からの性教育、どう始める?きっかけ作りのコツ

性教育をしなければと思いつつ、気が付けば息子は中学生。会話をしようと思ってもなかなか切り出せず、子どもからも性の話題をしてくることがないのですが、どうすれば自然に話せるようになるでしょうか?(40代女性・中1の子どもの母)

やまがたてるえ/助産師・チャイルドファミリーコンサルタント
病院勤務後、自身の妊娠出産子育てを経て、地域子育て支援の活動を15年行なっています。たくさんの親子の子育て相談や、女性ためのカウンセリングなども行っています。子育て支援を、家族支援へとシフトチェンジしたくNPO法人子育て学協会のチャイルドファミリーコンサルタントとしても活動中。現在まで6冊の本を出版。近著は【13歳までに伝えたい男の子の心と体のこと】
HP:https://www.hahanoki.com/

子どもが何歳になっても遅いということはない

「子どもが何歳になったから○○しなくちゃ」という類のお悩みを抱える方は多いです。大概は外から何か言われたことで悩んでいます。そして「もっと早くに手を打っておけば。遅かったかなぁ」と考えてしまったりするのですが、性教育について「遅いことはひとつもない!」と私は伝えたいです。「今始めれば、一番早い」のです。

共通の話題を話せるようになった先に性の話がある

性に関する事柄はひとりひとりの考えや価値観が反映されるので、話すことは難しいと感じる人もいます。特に、お母さん自身が性に対してネガティブな印象を持っていたり、ネガティブな経験があったりすると、話したくない気持ちが湧くのも自然なことです。

そういった場合は、無理して会話をしようとするのではなく、性について書いてある本を勧める、ニュースを話題にして「こういうことがあったけど、どう思う?」と対話を始めてみる、といったやり方もあります。

思春期は親との距離を取りたがる時期でもあるので、こちらが話題を投げかけても思うような返事が返ってこず、対話が成立しないこともあるかもしれません。そういうことがあっても慌てないでください。こちらが対話の窓をいつも開けていれば、気まぐれに返事が返ってくることもあるでしょう。そんな時に子どもがどんな答えを返してきても、まずは「考えを聞かせてくれてありがとう」と否定せず受け止め、それから「私はこう思うんだけど、どう思う?」と投げ返してみてください。

共通の話題に対して子どもの考えを聴き、自分の考えも伝えて対話する、というのがポイントです。また、共通の話題はニュースだけでなく、教科書を見せてもらって書いてあることを話題にしたり、部活動の話や、子どもの好きなYouTubeやゲームの話でもいいと思います。

よく「子どもがYouTubeばっかり観てます!ゲームばっかりやってます!」と嘆いている親御さんがいますが、「どんなYouTube、どんなゲームか知ってますか?」と聞くと、知らない人が大半です。どういうものに触れてどう感じているのかも分かっていないのに否定されたら、子どもだって話をしたくはありませんよね。まずは子どもが大事にしているものを親も大事にしてみるところから始めるといいのではないでしょうか。

いきなり性の話をしようとしてもハードルが高いですが、日常の話を成立させることを考えて、それが成立したら徐々に性の話もしていけばいいと思います。日常の話ができるようになればその先に性の話はあります。

子どもの話を聴くために親自身の準備も大事

今回のご相談のように、子どもに関する相談事や悩み事があると、とにかく子どもに目線がいきがちですが、親が子どもの話をきちんと聴ける状態でいる、という親の準備も大事です。

そのためには、話を聴くための場面や環境の設定に気を配るといいと思います。親自身に心配事のないタイミングや、次の予定が無くゆっくりと話を聴けるタイミング、ご飯を食べてお腹がいっぱいになって機嫌のいい夕ご飯後など、子どもに眼差しを向けられる準備を親がしておく必要があります。

また、横並びになって話すというのも効果的です。たとえば塾の送り迎えの車の中で話す、洗い物をやりながら話すなど、向かい合うのではなく顔を直視しなくても済む横並びの立ち位置は、性の話のようなテーマを扱うことに向いています。

性についてポジティブな価値観を持つ人が伝えることが大切

「こんなことを伝えたらどう思われるだろう」「性の話なんてしたら怒られるんじゃないか」と心配してしまう子どももいます。コツコツと話を聴く姿勢を見せて「うちの親にはこういう話をしても大丈夫なんだ」ということが分かってもらえたらいいと思います。

性のことに関して、悪いこと、卑猥なこと、価値のないものといった、ネガティブなバイアスが無いというスタンスを見せられるかどうかが大切です。「自分は女性だから、息子の性教育はお父さんから話してもらったほうがいいのではないか」というお母さんもいますが、私はそういうふうには思っていません。性別よりも、「ネガティブに話をする人には性の話をしないでほしい」と思っています。お父さんがネガティブなことしか言わないのならば、それは適切ではありません。ポジティブなことを言えるのであれば、親の性別がどうであるかは関係ありません。親が曇った眼鏡でネガティブに捉えて話してしまうと子どもは分かるのです。

親がトライアンドエラーを繰り返すこと自体が子どもの学びになる

子どもと性の話ができる関係性を築くことは、人間同士の信頼関係を築くことです。そのためにはトライアンドエラーしかありません。対人関係は経験です。うまくいくことといかないことがあります。うまくいかないことがあっても「失敗しちゃった。次なんとかしよう」という前向きな親子関係でいられるといいでしょう。

最近、good enough mother(ほどよい母親)という言葉がよく言われています。不十分であることを認めて、困ったことがあれば専門家に頼る。専門家のサイトやYouTubeを子どもに見せて、その先は子どもを信頼して子どもに任せる。そういう姿勢でもいいと思います。全てを大人が学んで、その通り何事もなく子どもが生きていくことが子どもの幸せかはわからないものです。そんな私自身も失敗ばかり(笑)。けれど、失敗してもやり直せばいい、誰かを嫌な気持ちにさせたら謝る。そういう姿勢を親が見せること自体も子どもたちにとって学びとなると思います。


今回は、子どもと自然に性の話ができるようになるにはどうすればいい?というご相談でした。性の話は日常の会話の先にあり、親自身の準備が大事。親がトライアンドエラーを繰り返す姿を見せることも子どもの学びになるなど、力強く、悩みの袋小路から解放してもらえるようなエールをいただきました。

取材・執筆
柳田正芳 from 性の健康イニシアチブ/6483works
日本で日本語で「性科学」「性の健康」の普及を目指す性の健康イニシアチブの立上げ人/代表。また、編集/校正業、執筆業、Webメディアディレクション業などを業とするライティングオフィス・6483worksの代表。
HP:https://masayoshiyanagida.tokyo/profile

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