
皆さんは、子どもの権利条約というものをご存知でしょうか。子どもの権利条約とは、すべての子どもは人権があり、自らの意見を言う権利や育っていくための環境が保証されることが明記されている文書です。この条約について聞いたことがないという方もいることでしょう。今回は、子どもの権利条約についてお話したいと思います。
子どもの権利条約とは?
子どもの権利条約は、正しくは「児童の権利に関する条約」といいます。子どもの基本的人権を国際的に保証するために、1989年に国連で採択された条約です。1990年に発効され、日本は、1994年に批准しています。
4つの権利
子どもの権利条約には、子どもの4つの権利が示されています。
①生きる権利
住む場所があり、食べ物や必要な医療を受けることができるなどの命を守るために必要な権利です。
②育つ権利
遊んだり勉強したりして、生まれ持った自分の能力をのばして成長していける権利です。
③守られる権利
紛争などに巻き込まれたり暴力や搾取、有害労働などを強いられたりしないこと、難民になったら保護されることなどが守られる権利です。
④参加する権利
自由に意見を発表したり、グループを作ったりすることができる権利です。
子どもの権利条約の基本原則
子どもの権利条約の原則的な考え方として、次の4項目が定められています。子どもは大人の付属物や所有物ではなく、一人の人間として大切な存在であることがわかります。
①生命、生存及び発達に対する権利
命が守られて、自分の能力を発揮して成長していける環境(医療・教育・生活支援など)を保証される権利です。
②子どもの最善の利益
子どもに関することが決定されて行われるときには、子どもにとっても最善を尽くすという「子ども第一」の考えです。
③子どもの意見の尊重
子どもは自分に関係する事柄について、自由に意見を示すことができ、周囲の大人はその意見を十分に考慮することが必要であるということです。
④差別の禁止
すべての子どもは、子ども自身や親の人種や国籍、性、意見、障がい、経済状況などのいかなる理由でも差別を受けることなく、条約が定めるすべての権利が保証されるということです。
子どもの権利条約のポスターより
2019年には、子どもの権利条約は30周年を迎えました。より多くの人に知ってもらうためにユニセフでは、子どもの権利条約のポスターを作りました。各条文をアイコン化して何について書かれているかを表しています。子どもにとってどれも大切なことを網羅した条約です。このポスターを参考に、子どもの権利とはどういうことかを考える機会にしても良いですね。
①子どもの定義
②差別の禁止
③子どもにもっと良いことを
④国の義務
⑤親の指導を尊重
⑥生きる権利・育つ権利
⑦名前・国籍を持つ権利
⑧名前・国籍・家族関係を守る
⑨親と引き離されない権利
⑩別々の国にいる親と会える権利
⑪よその国に連れ去られない権利
⑫意見を表す権利
⑬表現の自由
⑭思想・良心・宗教の自由
⑮結社・集会の自由
⑯プライバシー・名誉は守られる
⑰適切な情報の入手
⑱子どもの養育は先ず親に責任
⑲暴力などからの保護
⑳家庭を奪われた子どもの保護
㉑養子縁組
㉒難民の子ども
㉓障がいのある子ども
㉔健康・医療への権利
㉕施設に入っている子ども
㉖社会保障を受ける権利
㉗生活水準の確保
㉘教育を受ける権利
㉙教育の目的
㉚少数民族・先住民の子ども
㉛休み、遊ぶ権利
㉜経済的搾取・有害な労働からの保護
㉝麻薬・覚せい剤などのからの保護
㉞性的搾取からの保護
㉟誘拐・売買からの保護
㊱あらゆる搾取からの保護
㊲拷問・市警の禁止
㊳戦争からの保護
㊴被害に会った子どもを守る
㊵子どもに関する司法
㊶子どもにとってもっと良い法律
㊷条約の広報
まとめ
子どもは生きる権利を持ち、守られて育つこと、自分に関することについて意見を発する権利があります。当たり前のことですが、世界を見渡すと当たり前ではない現実もあります。日本も例外ではなく、虐待や児童ポルノなどはなくなっていません。子どもが健全に育つためには、私たち大人が子どもの4つの権利や基本原則をしっかりと守ることが必要だと思います。