災害と子どもの心のケアは、今回は最後となります。前編では、主に子どもの心のケアで大切な4つのことを紹介しました。中編では、被災した子どもに起こる反応を年齢別に示し、その対応策をお話しました。
今回は、子どもの被災場面を再現した遊びや専門的な治療が必要なとき、子どもをケアする大人のケアについてお話します。
被災の様子を再現した遊び
子どもは、被災した後に被災の様子(地震や避難など)の絵を描いたり、被災した場面のごっこ遊びをすることがあります。大人はびっくりすることでしょう。大人の言葉をそのまま真似たり、テレビなどを見た様子を語ったりします。
子どものこのような行動は、遊びを通して気持ちを整理したり表現したりしている様子であり、子ども自ら回復しようとする過程で見られる行動です。基本的に、やめさせることなく見守ってください。無理に否定したりやめさせたりすると、子どもの気持ちを表現する場がなくなってしまいます。子どもが言葉に出している様子を受け止めてあげましょう。
反対に、大人が子どもに被災の体験を無理に話させることは避けなければなりません。嫌がる子どもに衝撃を再現させるよう行為となります。子ども自身が話したいかどうかが大切です。
専門的な支援が必要なとき
周りの大人が一生懸命にケアをしても症状が非常に強く出る、時間がたってもおさまらないといった場合には、専門家の支援が必要です。次のような症状がある場合は、精神科・心療内科などの専門医に相談しましょう。または、保健所、養護教諭などに相談し、適切な診療科につないでもらいましょう。
- 頭痛・不眠・食欲不振などの症状が続いている
- 些細なことでイライラする、驚く、涙もろくなるなどの感情の起伏が激しい
- 体験したことに関連した話題を避ける
- 眠れない・うなされる・怖い夢を見る、反対に寝てばかりいる
- 引きもこりがちになる、反対に一人でいられない
- できごとのフラッシュバックがある
- 集中力がなくぼーっとしている
- 非常に緊張している
カウンセリングやセラピーは専門家に任せる
症状が数週間に及び、ひどく出ている、被災体験のごっこ遊びが数週間続いているなどの場合は、子どもがうまく気持ちを整理できていないことが考えられます。そんなときには、専門家に相談することが大切です。
絵画や運動、遊びを通してセラピーがあります。しかし、これらは、安心できる環境で信頼できる大人がそばにいることが前提です。また、カウンセリングやセラピーは、専門的な知識や研修が必要です。知識が不十分だったり研修を受けていない者が行うとかえって子どもたちの心の傷を深くしてしまう可能性があるため、絶対に避けてください。
子どもをケアする大人のケアも大切
災害だけでなく、とてもショックなできごとが起こったときに、子どもをケアする大人もショックを受けます。大人は子どもを守りたいと思い、自分のケアを後回ししてしまう傾向があるため、そのような傾向があることを知っておく必要があります。
大人でもショックを受ければ、動揺したり不安や恐れを抱くことは正常な反応です。自分のケアをしつつ、子どもたちのことを見守ることが必要となります。そのときに大切なことは、次の3つです。
- 信頼できるパートナーや仲間を持つこと
- 自分の限界を知ること(頼ることができる人や関係を持つこと)
- 自分のペースを守ること(頑張りすぎないこと)
地域の人や仲間に「助けて」と言え、孤立しないようにしたり、信頼できる人に自分の気持ちを話したりすることも必要です。
まとめ
3回にわたって災害と子どもの心のケアについてお話しました。災害はいつ、どこで起こるかわかりません。子どもたちへの接し方、反応への対策など頭の引き出しに入れておいてくださいね。使わない知識であってほしいですが、備えあれば憂いなしです。参考文献3の日本小児科医会のサイトには、子どもの災害関係の情報がありますので、参考にしてください。