子どもに「生理」をどう伝えたらいい?

生理の経血を子どもに見られた時、子どもが思春期を迎える時など、生理の話を子どもにどう伝えるべきか、悩む方も多いのではないでしょうか?子どもへの生理の伝え方について、今回は助産師でチャイルドファミリーコンサルタントのやまがたてるえさんから教えてもらいました。


監修・話題提供
やまがたてるえ/助産師・チャイルドファミリーコンサルタント
病院勤務後、自身の妊娠出産子育てを経て、地域子育て支援の活動を15年行なっています。たくさんの親子の子育て相談や、女性ためのカウンセリングなども行っています。子育て支援を、家族支援へとシフトチェンジしたくNPO法人子育て学協会のチャイルドファミリーコンサルタントとしても活動中。現在まで6冊の本を出版。近著は【13歳までに伝えたい男の子の心と体のこと】
https://www.hahanoki.com/

生理の話をいつ伝える?ー「性教育は日常」という意識を忘れない

まずそもそも、「性教育は日常」なので、一緒にお風呂に入る、子どもがトイレまで追いかけて来た時に生理用品を目撃する、そういった生理に触れるシーンが日常の中に起こって、子どもが「なんで?どうして?」「それは何?」と思った時に、生理の話をするのがいいですね。

未就学児には絵本を使って伝える

未就学児さんには、絵本を使って伝えるといいと思います。

あっ!そうなんだ!性と生: 幼児・小学生そしておとなへ』(浅井春夫ほか 著)や、『おうちせいきょういくえほん』(La ZOO著、アクロストン監修)では、生理や妊娠の仕組みについても小さなお子さんにも分かりやすく解説しています。また、ほかにも多数の良書があります。

生理に限らず、性教育の絵本は様々なものがあるので、ぜひ手にとって見ていただけたらと思います。

未就学児といっても、3歳になったばかりか、5歳の年長さんかでも違ってくるので、オーソドックスな手に取りやすいものを1~2冊用意してもらえるといいと思います。その時に図書館を利用するのもいいですね。図書館にないときは図書リクエストを出してみることもお勧めします。

図書館に行って絵本を選ぶ際のポイントですが、年齢にかかわらず、何冊も手に取ることが大事です。「何歳だから絶対これ」というものはありません。ただ、3歳くらいなら絵が大きくて分かりやすくて短めな作品、年長さんくらいなら文章があったり物語があったりして自分で読める作品がいいと思います。

性教育の絵本の仕立ては、前半が子ども向けで後半が大人向けのメッセージになっているものが多く、大人向けのメッセージは重たいものもあれば軽いものもあります。小学生くらいになると、大人向けの解説部分を子どもが読めてしまうこともあるので、それも含めて、どの本がいいかを親が見極めてあげるといいでしょう。

初めて生理を迎える前の時期の子には動画もオススメ

今度は少し年齢が上がって、初めての生理を迎える前の時期の子に伝える場合にどうするかです。

10歳を過ぎたら動画でも学べます。そこで、性教育動画Amaze(海外で制作された性教育動画で、NPO法人ピルコンが日本語訳を行っている)や、生理用品メーカーのソフィの『ソフィはじめてからだナビ』などの動画メディアを観てもらうというのもいいと思います。このくらいの年齢になると、自分で読む力がついているので、漫画も含めて本や、大人でもきちんと読める内容の絵本もいいと思います。そして私の著書もお勧めです。

やまがたてるえさんが出版した性教育書籍

生理用品を扱うことはマスクやティッシュを扱うのと同じ

ちなみに初潮前の年代の子たち向けには、生理用品のこともぜひ伝えてみてください。たくさんの生理用品がありますが、日本の女性の多くはナプキンを使っていて、タンポンを使用しているお母様は少数派だと思います。お母さんが使っているものだけを子どもに紹介することが多いです。だから、それ以外に「こういうものもあるんだよ」と紹介する機会があってもいいと思っています。

生理用品には、ナプキン、タンポン、ピース(ナプキンにプラスして使う体に挟むタイプの生理用品)、吸水型のサニタリーショーツ、月経カップなど色々なものがあります。月経カップは小学生が使うのはまだ難しいかもしれませんね。

生理用品の伝え方のポイントですが、お母さんが先輩として「私はコレを使っていた」と伝えることで、親が使っていた月経グッズを子どもが使う傾向があると聞いたこともあります。ナプキンも布製の物やオーガニックコットンの物もあるので、自分が普段使っているもの以外もお母さん自身でも使ってみてどうだったか、お互いに生活の中で使うものという形で、マスクやティッシュと同じ衛生用品を扱うように紹介していくといいです。

生理の仕組みはどう伝える?

私の場合、生理の仕組みをこんな風に説明しています。

女性の身体には赤ちゃんをお腹の中で育てて産む仕組みがあるよ。女性の身体はそのようにデザインされている場合があるよ。というところから始めます。

子どもを産む人生も産まない人生も同じように尊重されることが大切なので、事実として「そういう仕組みがある」と伝える言い方をしています。

そして、おしっことウンチの穴の間に命のトンネルの腟というのがあって、その先に赤ちゃんが宿る、子のお宮と書いて子宮という所があるよ。その横に卵巣という赤ちゃんの種を作るところが2つあって、大人の階段を上って身体が変化していく中で、月に1回、排卵といって赤ちゃんの種が出てくるようになるんだ。子宮では赤ちゃんを準備するお布団ができて、そのお布団が使われなかったら体から出ていくのが生理だよ。それが定期的に起こっていくんだよ。

という感じで伝えています。この時に、体の仕組みのわかる絵本などを使って説明するとより分かりやすくなります。身体の変化の話として伝えて、恥ずかしがって話さないことが大事ですね。

男の子にも生理を身体の仕組みとしてフラットに伝えよう

身体の性が男性の人は生理を経験することはありません。男の子に伝える時は、身体の仕組みの話としてフラットに伝えるといいと思います。

「女の子には、生理(月経)と言って、身体の変化が起こる時期があるよ」という事実を伝えます。「女の子に優しくしなさい」と押し付けるものではありません。「こういう変化があるのでお互いに知っておくといいし、男の子にも精通というのが起こるからね。大人になる時に二次性徴が起こるんだよ。知っておくとお互いのためになるよね。もし何か困っていたら助けられるよね」とニュートラルな感じで話すことが大事です。

押しつけるのではなく、「生理現象というくらいだから、汗や涙が流れるように、お通じが出るように、生理というものが起こるんだよね。科学的な理科の話だよ」という話し方をすると受け止めやすいのではないかと思います。

まずは相手の話を聴き切ることから、性について話せる関係が築かれる

生理のことだけでなく、性のことは話しづらいですよね。相手との関係性によっても話しやすさは変わります。子どもと性について話しやすい関係を築くためにはどうすればいいかも考えてみましょう。

今は働いている親も多いので、子どもと向き合う時間を取るのが難しいこともあると思いますが、意識的に子どもと向き合う時間、話を聞く時間を作るといいですね。その時、一方的に話すのではなく、「どう思う?」「どうして知りたいの?」「どうしたいの?」と尋ねることを大事にしながら伝えていくことや、自分の考えを伝える時にも、押し付けないことを意識して大事にすると、子どもとの関係性も整っていくはずです。

気を付けていてもちょっとした語気や表現の仕方で、押し付けているように聞こえてしまうこともあり得ます。対応を間違ってしまうこともあります。なので、気をつけすぎて何も話せないより、トライアンドエラ―で話をしていこうという気持ちや姿勢が大事です。また、何か違うと思った時に「どう思った?」と反応を確かめながら進めていくのがいいと思います。

大人は、教えたいし伝えたいし大事にしたいことがあるので、しゃべりすぎてしまうことがよくあります。とにかく聴く。まず聴き切る。ということを大事にしたいですね。そのためには大人が辛抱することです。聴き切ることの難しさをいつも意識しておくことと、きちんと聴けていない自分を受け止めることができればいいんじゃないでしょうか。


いかがでしたか? やまがたさんのお話は、説明として分かりやすいことはもちろん、聴いていて安心できる優しいトーンの話し方が印象的でした。性教育は日常ということ、また、様々なツールも活用しながら、生理の話を通して、お子さんと向き合うきっかけにしていけたらいいですね。

取材・執筆
柳田正芳 from 性の健康イニシアチブ/6483works
日本で日本語で「性科学」「性の健康」の普及を目指す性の健康イニシアチブの立上げ人/代表。また、編集/校正業、執筆業、Webメディアディレクション業などを業とするライティングオフィス・6483worksの代表。
https://masayoshiyanagida.tokyo/profile

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