2021年 05月20日

運営事務局

世界で起こっている「女性性器切除」ってどういうこと?

皆さんは、世界の国々で少女や女性が受けている割礼という儀式を聞いたことがあるでしょうか。日本では、行われておらず聞き慣れない慣習です。しかし、世界で2億人もの少女や女性が割礼を受けいるとされています。

「割礼」とは何か。詳しく知らないという方もいることと思います。今回は、月経や出産にも関わるこの割礼についてお話します。

割礼とは何か

割礼とは、女性性器切除(Female Genital Mutilation:FGM)のことです。「女性性器切除は、医療目的以外で女性の女性器の一部もしくは全体を切除するか、女性性器に対してその他の損傷を与えること」(「世界人口白書2020」より)です。

ここで、すでに衝撃を受けている方も多いことでしょう。なぜそのようなことをするのか、その後どうなってしまうのか、非常に気になりますよね。ここでは、男性の割礼と区別するために、あえて「女性性器切除」という言葉を使用しています。男性の割礼とは意味が違い、「割礼」という言葉を使うことによって、女性性器切除の問題がぼやけないようにするためという意見もあるからです。

何のために行うのか

女性性器切除は宗教や地域の慣習による儀式で、次のような誤った信念に基づいて行われています。そして、男性の都合によって行われているのです。

  • 女性の妊娠・出産の可能性を高める
  • 男性の性的快感を高める
  • 女性の性欲を抑える
  • 宗教的信仰心に叶い、地域社会に受け入れられる
  • 少女の純潔・名誉・清潔さを保持し、より結婚しやすくなるため

誰によって行われているのか

この女性性器切除は誰によって行われていると思いますか。それは、多くは女性の手で行われています。多くは、地域の産婆、年配の女性などによって行われています。

少女や女性が地域社会で大人として受け入れられるため」という意味合いがあり、親は純粋にそれを信じている場合があります。地域によって年齢の差がありますが、生後8日目に受けさせるものという慣習を持った部族もあります。

どんなふうに行われるのか

地域よって違いがありますが、女性性器切除はお祝い事とされたり「これで無事に〇〇教徒となった」など良い意味で扱われています。国や部族などによって儀式の方法は様々ですが、女性器切除を受ける日は、きれいに着飾り母親などに付き添われて、その場所に行きます。何をされるのか知らされていないことが通常です。そこに男性の姿がないことも世界共通です。

女性器切除を受けるかどうかは、母親や親族の女性、その集落で女性器切除を行う女性に委ねられています。処置を受ける少女には決定権はありません。麻酔などは行われず、女性器の一部である、クリトリスや小陰唇を切除する方法、月経血が流れ出るほどの隙間を開けて陰唇を縫い合わせる方法など様々です。

どのような影響があるのか

女性器切除には、宗教的、男尊女卑的な側面があり、ただ女性器切除を切り取るという行為だけに終わるわけではありません。痛みに耐え、その後感染の可能性があります。十分な消毒がなく女性器が切除され、切除に使用するカミソリやナイフは使いまわしであることも多いのです。

小陰唇を縫い合わされた後、月経血が排出できず、腹痛や病気を引き起こす原因となり、妊娠や出産、将来の健康にまで影響を及ぼします。さらに、身体的な悪影響だけではなく心にも傷を負うことになります。

女性器切除をなくす活動

ユニセフやWHOなどの国際団体は、女性器切除をなくそうと活動を続けています。例えば、医療従事者から女性器切除の実施者や親への教育がなされるように、医療従事者への研修を行っています。また住民に向けて、女性器切除の悪影響や信じられている女性器切除の効果がないことなどについて、住民集会を行ったりスピーチやビデオを使ったりして啓蒙しています。

まとめ

女性たち自身も声をあげ始め、日本をはじめ様々な国の支援団体が女性器切除撲滅のために活動しています。私達は、女性器切除の事実を知るところからはじめ、撲滅に向けて何ができるか考えていく必要があるのではないでしょうか。

ハッシュタグ

この記事を書いた人

ツキとナミ運営事務局

この作者の記事一覧
お気に入り 1

同じカテゴリー の他の記事

  1. パートナーとのすれ違い、なぜ起こる?どう対策する?

    夫婦のよくある悩みに、「パートナーとのすれ違い」があります。すれ違いはどうして起こるのか、回避するにはどうすればいいのか、こんなすれ違いの場合はどう考えて対応したらいいの?をまとめました。 執筆 柳田正芳 「誰もが自分は自分に生まれてよかったと思える世界」を作るために「どこに行っても性の健康を享受できるように社会環境をアップデートすること」を目指す性の健康イニシアチブの代表。2002年から国内外の性教育、性科学の様々な活動に参加してきたほか、思春期保健や両親学級などの活動も経て現在に至る。プロフィールサイトはこちら 夫婦がすれ違う原因の多くは、お互いに思っていることのすり合わせ不足 私は、「夫婦のコミュニケーション」について考えるワークショップの講師として、もうすぐ子どもが生まれてくるというタイミングに差し掛かった夫婦延べ1,000組以上と会い、話を聴いてきました。 多くの夫婦との出会いを通じて感じていたことがあります。それは、よくある夫婦のすれ違いの原因は、お互いの思っていること・考

    もっと読む
    2023年 01月27日
    #コミュニケーション
  2. もし子どもがLGBTかも?と思った時には?

    6歳の子どもの母です。子どもは体の性別は男性ですが、プリンセスになりたい、髪を伸ばしたいと言っており、もしかして性同一性障害ではと思っています。これから小学校に進学することもあり、子どもや周囲とどのように接するのがいいのでしょうか。(30代女性・6歳の子どもの母) 「自分の子どもが性のあり方に悩んでいるかも……」と思った時、どんな対応ができるのでしょうか?今回は、性別違和を抱えている可能性のあるお子さんをもつお母さんからご相談をいただきました。こういった場合の本人との関わり方、学校との調整の仕方、保護者の相談先などについて、性的マイノリティの子ども・若者の支援をおこなう一般社団法人にじーず代表の遠藤まめたさんにアドバイスをいただきました。 監修・話題提供 遠藤まめた 1987年埼玉県生まれ。一般社団法人にじーず代表。トランスジェンダー当事者としての自らの体験をきっかけにLGBTの子ども・若者支援に関わる。近著に「教師だから知っておきたいLGBT入門 ―すべての子どもたちの味方になるために」(ほんの森出版)。 親と本人の悩みを受け止める

    もっと読む
    2023年 01月13日
    #コミュニケーション
  3. 子どもに「LGBT」をどう伝える?【後編】

    さまざまな性的マイノリティのうち、代表的な「レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー」の4つの頭文字をとった総称「LGBT」。前回は、さまざまな性のあり方やその伝え方について、一般社団法人にじーず代表の遠藤まめたさんにお伺いしました。そして、子どもがもし「ホモ」「オカマ」などと発言していたら、皆さんだったらどう反応しますか?今回はLGBTについて子どもに話し始めるきっかけや、もし差別的な発言をした場合の対応についてお話しいただきました。 遠藤まめた 1987年埼玉県生まれ。一般社団法人にじーず代表。トランスジェンダー当事者としての自らの体験をきっかけにLGBTの子ども・若者支援に関わる。近著に「教師だから知っておきたいLGBT入門 ―すべての子どもたちの味方になるために」(ほんの森出版)。 子どもに話し始めるきっかけ ーーLGBTについて子どもに教える時に、話し始めるきっかけはどうすればいいか、お伺いしたいです。 最近すごくいい絵本がたくさん出ているんです。 たとえば子どもで

    もっと読む
    2022年 12月27日
    #コミュニケーション
  4. 子どもに「LGBT」をどう伝える?【前編】

    最近「LGBT(いわゆる性的マイノリティ)」や「性の多様性」について、ニュースやドラマ等を通して知る機会も増えてきたのではないでしょうか。子どもが成長していく時には、その子自身の性のあり方はもちろん、他人も尊重することについて、LGBTに関する正しい知識と共に伝えていきたいものですよね。今回は子どもに「LGBT」について伝える方法について、一般社団法人にじーず代表の遠藤まめたさんにお聞きしました。後編では、子どもに話し始めるきっかけについて考えます。 遠藤まめた 1987年埼玉県生まれ。一般社団法人にじーず代表。トランスジェンダー当事者としての自らの体験をきっかけにLGBTの子ども・若者支援に関わる。近著に「教師だから知っておきたいLGBT入門 ―すべての子どもたちの味方になるために」(ほんの森出版)。 多様な性のあり方とは ーーまず、LGBTについて、子どもにどう説明したらいいでしょうか? 人間の性のあり方は4つの要素の組み合わせによって作られています。

    もっと読む
    2022年 12月09日
    #コミュニケーション
  5. 男の子の子育て!ジェンダー平等の意識を育むには?

    世界146ヵ国中116位。日本のジェンダーギャップ(男女格差)は「先進国の中で最低レベル」「アジアの中でも順位が低い」ということが、世界経済フォーラムが発表した「ジェンダー・ギャップ指数2022」から見て取れます。 「わが子が大きくなる頃には、男女の格差が改善していてほしい」と思う方は少なくないと思います。男女の格差を生み出す(また、許容する)社会環境は、ひとりひとりの心がけ次第でいい方向に変えていけるはずです。男女の格差に敏感で、そういうものにNOと言えるようにわが子を育てるにはどうすればいいのでしょうか?文筆家の清田隆之さんに聞きました。 監修・話題提供 清田隆之 文筆業、恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。「恋愛とジェンダー」をテーマに様々な媒体で執筆。著書に『さよなら、俺たち』(スタンド・ブックス)『自慢話でも武勇伝でもない「一般男性」の話から見えた生きづらさと男らしさのこと』(扶桑社)など。新刊『どうして男はそうなんだろうか会議――いろいろ語り合って見えてきた「これからの男」のこと』(澁谷知美さんとの共編著/筑摩書房)が発売中。Twitter→@momoyama_radio 編集部から「ジェンダー」とは、文化的・社会的な性差を指します。社会の中で取り決められた「男性・女性とはこういうもの」と期待される役割分担意識や差異を言います。例えば、「男性は家庭の外で働いてお金を稼いで家族を養うもの

    もっと読む
    2022年 12月02日
    #コミュニケーション
  6. SNS時代に男性が抱える生きづらさとは?

    これまで、可視化されることや、気に留められることがほとんどなかった「男性の生きづらさ」。SNSでも男女間の不平等や格差の話題において、「女性のほうが不利な立場に置かれているのだから、男性の生きづらさなんてないでしょう」という見方もありますが、男性が自らの生きづらさに向き合うことで、男女の不平等や格差の解決への一歩になるのではないかという考えもあるようです。文筆家の清田隆之さんに伺いました。 監修・話題提供 清田隆之 文筆業、恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。「恋愛とジェンダー」をテーマに様々な媒体で執筆。著書に『さよなら、俺たち』(スタンド・ブックス)『自慢話でも武勇伝でもない「一般男性」の話から見えた生きづらさと男らしさのこと』(扶桑社)など。新刊『どうして男はそうなんだろうか会議――いろいろ語り合って見えてきた「これからの男」のこと』(澁谷知美さんとの共編著/筑摩書房)が発売中。Twitter→@momoyama_radio 昔からあった問題がSNSにより注目されやすくなってきた ――男性が女性に対して差別的なことを言って炎上したり問題になったりすることが少なくないように思うのですが、最近の事例や傾向などはあるでしょうか? 昨

    もっと読む
    2022年 11月28日
    #コミュニケーション
同じカテゴリー の記事をもっと読む
TOP