皆さんは、世界の国々で少女や女性が受けている割礼という儀式を聞いたことがあるでしょうか。日本では、行われておらず聞き慣れない慣習です。しかし、世界で2億人もの少女や女性が割礼を受けいるとされています。
「割礼」とは何か。詳しく知らないという方もいることと思います。今回は、月経や出産にも関わるこの割礼についてお話します。
割礼とは何か
割礼とは、女性性器切除(Female Genital Mutilation:FGM)のことです。「女性性器切除は、医療目的以外で女性の女性器の一部もしくは全体を切除するか、女性性器に対してその他の損傷を与えること」(「世界人口白書2020」より)です。
ここで、すでに衝撃を受けている方も多いことでしょう。なぜそのようなことをするのか、その後どうなってしまうのか、非常に気になりますよね。ここでは、男性の割礼と区別するために、あえて「女性性器切除」という言葉を使用しています。男性の割礼とは意味が違い、「割礼」という言葉を使うことによって、女性性器切除の問題がぼやけないようにするためという意見もあるからです。
何のために行うのか
女性性器切除は宗教や地域の慣習による儀式で、次のような誤った信念に基づいて行われています。そして、男性の都合によって行われているのです。
- 女性の妊娠・出産の可能性を高める
- 男性の性的快感を高める
- 女性の性欲を抑える
- 宗教的信仰心に叶い、地域社会に受け入れられる
- 少女の純潔・名誉・清潔さを保持し、より結婚しやすくなるため
誰によって行われているのか
この女性性器切除は誰によって行われていると思いますか。それは、多くは女性の手で行われています。多くは、地域の産婆、年配の女性などによって行われています。
「少女や女性が地域社会で大人として受け入れられるため」という意味合いがあり、親は純粋にそれを信じている場合があります。地域によって年齢の差がありますが、生後8日目に受けさせるものという慣習を持った部族もあります。
どんなふうに行われるのか
地域よって違いがありますが、女性性器切除はお祝い事とされたり「これで無事に〇〇教徒となった」など良い意味で扱われています。国や部族などによって儀式の方法は様々ですが、女性器切除を受ける日は、きれいに着飾り母親などに付き添われて、その場所に行きます。何をされるのか知らされていないことが通常です。そこに男性の姿がないことも世界共通です。
女性器切除を受けるかどうかは、母親や親族の女性、その集落で女性器切除を行う女性に委ねられています。処置を受ける少女には決定権はありません。麻酔などは行われず、女性器の一部である、クリトリスや小陰唇を切除する方法、月経血が流れ出るほどの隙間を開けて陰唇を縫い合わせる方法など様々です。
どのような影響があるのか
女性器切除には、宗教的、男尊女卑的な側面があり、ただ女性器切除を切り取るという行為だけに終わるわけではありません。痛みに耐え、その後感染の可能性があります。十分な消毒がなく女性器が切除され、切除に使用するカミソリやナイフは使いまわしであることも多いのです。
小陰唇を縫い合わされた後、月経血が排出できず、腹痛や病気を引き起こす原因となり、妊娠や出産、将来の健康にまで影響を及ぼします。さらに、身体的な悪影響だけではなく心にも傷を負うことになります。
女性器切除をなくす活動
ユニセフやWHOなどの国際団体は、女性器切除をなくそうと活動を続けています。例えば、医療従事者から女性器切除の実施者や親への教育がなされるように、医療従事者への研修を行っています。また住民に向けて、女性器切除の悪影響や信じられている女性器切除の効果がないことなどについて、住民集会を行ったりスピーチやビデオを使ったりして啓蒙しています。
まとめ
女性たち自身も声をあげ始め、日本をはじめ様々な国の支援団体が女性器切除撲滅のために活動しています。私達は、女性器切除の事実を知るところからはじめ、撲滅に向けて何ができるか考えていく必要があるのではないでしょうか。