
夫婦・パートナーと家事や育児に取り組む際、「なんだかうまくいかない…」「相手がやってくれなくてイライラする」「自分も頑張っているつもりだけどダメ出しばかりされる」といったお悩みがありませんか?前半では家事シェア研究家である三木智有さんから、家事をパートナーシェアとシェアする大切さやその意義について取り上げました。後半では、引き続き三木さんから、家事シェアの進め方の具体的な方法と、4つの型について教えていただきました。

三木智有/家事シェア研究家・NPO法人tadaima!代表・インテリアコーディネーター
リフォーム会社でインテリアプランニング、施工管理、営業販売などの業務を経て独立。現在はフリーのコーディネーターとして活動中。
家は家族にとって何より”自分らしくいられる居場所”であって欲しい。という想いから、「10年後も”ただいま!”と帰りたくなる家庭」で溢れた社会の実現を目指し、2011年にNPO法人tadaima!を起業。
日本唯一の家事シェア研究家として、家事シェアを広める活動を行っている。
家事シェアの4つの型を知って一番合うものを選ぶ
ーー三木さんが家事シェアを具体的にどのように捉えているのかを教えていただけますか?
武道の段階の踏み方に「守破離(しゅはり)」というのがありますよね。守は型を守る段階、破はそれに自分なりの工夫を追加する段階、離は型から離れて自己流を作っていく段階をそれぞれ指しています。何かを学ぶときにもこのような順序があると思うのですが、家事のシェアについては、ほとんどの人がまず、守が分からない。自分の生まれ育った家庭のやり方しか分からないうちに、破と離に行ってしまう。結果的に、前に進めないまま諦めてしまう人が多いです。
家事シェアの守つまり基本の型については、家事シェアの相談を10年以上受けてきた中で、大きく4つに分類できると思っています。

シュフ型チーム
この人が指示を出しているという人がいる場合
その人が、パートナー、お子さん、家事代行さんといった他のメンバーに指示を出しながら回している

シュフ型で大事なのは、どういうときにお互いがストレスを感じるかを見極めることです。シュフ型やハイブリッド型は、司令塔の役割の人が、この図でいう各ヘルパーに指示を出すんですが、その瞬間にストレスがお互いに溜まるんです。指示出しさえうまくできれば、シュフ型はうまく回ります。
よくあるパターンですが、司令塔役の人がお休みの日に「今日は天気がいいから洗濯と買い物やっちゃおう!」と思ってやろうとする。隣でパートナーがソファーに寝転がってテレビを観ている。そんなに暇そうにしているならお願いしようかなと思う。すぐにお願いできればいいんですが、「お願いしようかな…でも昨日も遅かったし忙しそうだし、疲れてるかもしれない…」とためらってしまうと抱え込みになります。思い切ってお願いしたのに「えー、後でもよくない?」「今じゃなきゃダメ?」「はいはい、やりますよ」といやいや対応されるとストレスが溜まります。シュフ型の司令塔役が指示を出してうまくいくのは、指示を受けた人が「すぐにやります!喜んで!」と返事してくれる時だけです。それ以外はだいたいストレスが溜まりますし、指示を受ける側も「いま頼まれても困るな…」となります。
そこで、「何を」やるかよりも、「いつ」やるかを決めることです。「このタイミングにやってね」と時間の約束をすれば回るようになります。「朝ごはんのあと掃除するから一緒によろしくね」「平日の朝は色々頼むからそのつもりでいてね」といった具合に。
担当型チーム
どの家事が誰の担当かが明確に決まっている場合

担当型は各家事の担当者をそれぞれ決めます。担当型がうまく回るかどうかは、担当者の自主性にかかっています。担当者が自主性をなくせばシュフ型崩れになります。洗濯担当の人がいつまでも洗濯をやらなかったら「洗濯やってよ」と言わないといけなくなります。それはシュフ型で、言われた人が洗濯を回すだけということになります。
担当型の場合は、シュフ型と全く逆で、「何を」やるかを決めます。そのうえで、「いつ」やるかは絶対にその担当の人に委ねなくちゃいけません。
いつ食器洗いするの?まだやらないの?なんでやらないの?と言えば言うほど、担当の人のやる気は失われていきます。
担当型をうまく回すためには、いつやるかは絶対に言わない。その代わり、「いつまでに」やるかの締切を決めることが大事です。締切を約束して、それが過ぎたらフィードバックをするやり方でいいと思います。
ハイブリッド型チーム
シュフ型をベースにしつつ、特定の家事について担当が明確に決まっている場合

ハイブリッド型は、シュフ型と担当型の合わせ技です。担当が決まっていないものはシュフ型の方法で回して、担当が決まっているものは口出しをなるべくしないで回すとうまくいきます。
自律型チーム
気がついた方が気がついた時にやっている場合

自律型の注意事項は、家事育児のチキンレースになる可能性があるということです。いつ気がつくか、どうなったらやろうと判断するのか、そういったものが人によって違うので、結局いつも自分ばかりがやっているという状況になる恐れがあります。すると自律型が崩れ始めて、知らないうちに相手がストレスを抱えていることがあります。
自律型の場合は、発動ポイントをすり合わせるとうまくいきやすいです。「どうなったら掃除したいよね」「週に1回ぐらい掃除しよう」「洗濯機がいっぱいになる前に洗濯機回したいよね」など、どのタイミングが適切だと思うかをすり合わせしておくと、チキンレースにならずに済むと思います。
ーー大変よく分かりました。どの型が良い悪いというのがあるんでしょうか?
これら4つの型は、どれが良くてどれがダメということは全くありません。ただ、どのスタイルにも、上記で紹介したように、それぞれに運用の方法があります。それがうまくできれば回り、うまくできないと回らないです。
パートナーと家事シェアを始めるには

ーーなるほどです。ご紹介いただいた4つの型について、自分の家庭に一番合う型を見つけるにはどうすればいいですか?
それぞれの型を1~2週間ずつ試してみてうまくいくところとうまくいかないところを見極められると、自分たちが理想とする家事シェアにたどり着けるんじゃないかと思います。
ーー前半では、家事シェアを進めるためには、一緒に楽しく過ごせる関係性が不可欠というお話がありましたが、最初の切り出し方としてまず工夫できることはありますか?
相手の好きなことを想像してみるといいと思います。相手が日本酒が好きなら「ちょっといい日本酒を買ったんだ。だから、ちょっと飲もうよ」。ご飯が好きな相手なら「どこどこのお店が美味しいらしいから今度食べに行こうよ」というように。相手が好きなことを挙げて、「それならいいよ」と相手が言いやすそうなものに誘ってみるのがいいんじゃないでしょうか。
漠然と相手に「楽しいおしゃべりしましょうよ」と言われてもちょっと構えてしまうかもしれないので、相手にとって楽しいものを想像して誘ってみるといいと思います。
取材・執筆
柳田正芳 from 性の健康イニシアチブ/合同会社6483works
「誰もが自分は自分に生まれてよかったと思える世界」を作るために「どこに行っても性の健康を享受できるように社会環境をアップデートすること」を目指す性の健康イニシアチブの代表。2002年から国内外の性教育、性科学の様々な活動に参加してきたほか、思春期保健や両親学級などの活動も経て現在に至る。また、編集/校正/執筆業、ブランディング・プロモーション支援業を行う合同会社6483worksの代表としても活動。インタビュー記事の制作を得意とする。
性の健康イニシアチブ https://sexualhealth-initiative.org/
合同会社6483works https://6483works.tokyo/