夫婦でも、子どもとも考えたい「性的同意」とは

「性的同意」という言葉を聞いたことはありますか?

性的同意とは、すべての性的な行為に対して、お互いが「その行為を積極的にしたいと望んでいるか」を確認することを指します。ここでいう「性的な行為」とは、性行為だけではなく、キスやハグ、手をつなぐ、ボディタッチや性的な会話や言動も含まれます。たとえお互い好き同士であっても、性的なコミュニケーションや会話の後で、モヤモヤしたり嫌な気持ちになったりしたとしたら、もしかしたら性的同意を大切にされていなかったことが原因かもしれません。

性的同意はなぜ大切?

人はだれでも自分の身体にだれがどのように触れるのかその人自身が決める権利があります。本人が望まない性的なことやふれあいをすることは、その人の境界線を侵害し、尊厳を傷つけてしまうことになります。大前提として性について、他の人の権利を尊重しつつ、安心してポジティブに楽しめるということは、誰もが当たり前に持つ権利であることを忘れずにいたいですね。

その一方で、「嫌よ嫌よも好きのうち」「女性は従順でいるのがいい」「誘われたら応じないのは男らしくない」といったことを多く見聞きしてきた人もいるかもしれません。このような社会的価値観の中で育つことは、相手にNOと伝えるのが難しいと感じることにもつながっています。

「空気を読まなくてはいけない」というプレッシャーや、性行為で気まずくなりたくないという思いを抱えている人も多く、気持ちをオープンに話すことに恥ずかしさを感じたり、相手にも口にしてほしくないという好みがあったりする人もいるかもしれません。

しかし、性的同意を理解し大切にすることで、お互いがいつも「ここまではOK/NG」といった境界線が守られ、自分らしく安心して過ごすことや相手との信頼関係を深めることにつながるのです。

性的同意のポイントは?

ここで性的同意の4つのポイントを解説します。

  • NOと言える環境が整っている(非強制性)
  • 社会的な地位や力関係に左右されない対等な関係である(対等性)
  • 一つの行為にはその都度の確認が必要(非継続性)
  • その行為が「したい」という明確で積極的な同意がある(明確性)

そのため、曖昧な返事や返事が返ってこない時、お酒に酔っていたり寝ていたりするなどして相手が同意を示すことが難しい状況にある場合は同意が取れているとは言えません。同意が確認できない時はすぐにその行為をやめましょう。またたとえ相手が同意しなくても相手を責めるのはやめましょう。同意を得られなかったとしても、相手はその人のことを全否定したり、愛情がなかったりすることを意味するわけではありません。

また、ボディランゲージや表情もそのヒントになりますが、暗く表情が分かりづらい環境であることもあります。また、同意が確認することなくいきなり性的言動が始まると、驚きや恐怖で身体が固まってしまうこともあります。たとえ腟が濡れる、男性器が勃起するなど性的な反応を身体が示していても、身体的な刺激に対する生理現象で、心は同意していないという可能性もあるため、できれば言葉で、注意深く相手の同意を確認する必要があります。

ムードが壊れる?

「いちいち同意をとっていたらムードが壊れる」といった意見もあるかもしれません。しかし、同意を取らずにムードを優先するのは、相手の気持ちに向き合えていると言えるでしょうか?

性的なコミュニケーションの好みは人それぞれですが、言葉にするのが苦手という人は、豆電気をつけておくといったサインや「仲良しする」といった二人が分かる合言葉など、お互いが心地よく性的同意をとる方法を考えておくと同意を取る段階から楽しいコミュニケーションにつなげていくことができます。

性的同意年齢が16歳に

これまで日本の刑法では、性行為に同意する責任能力があるとされる「性的同意年齢」は13歳と設定されていました。13歳以上の人への性行為が違法であるかどうかは、抵抗・拒否することができなかったほどの暴行または脅迫を受けたと被害者側が証明する必要がありました。そのため、これを問題視する市民の声が後押しとなり、刑法改正の議論を経て、2023年6月に強制性交等罪と強制わいせつ罪は「不同意性交等罪」に改められ、性的同意年齢も16歳に引き上げられました。(13歳から15歳の子どもと性交した人が5歳以上年長の場合は処罰対象になります。)このような法律について知っておくことも大切です。(法改正についての詳細はこちら

性的同意は恋人間だけではなくあらゆる関係性で重要

性的同意が必要なのは恋人同士だけではなく、夫婦や親子といった家族、親戚、友人などあらゆる関係性で大切です。たとえ夫婦であっても性行為の誘いにいつも応じないといけないというわけではありません。夫婦でも相手の意に反する性行為を強制するのはレイプで犯罪となり得ます。また、親が勝手に子どものおしりをポンポンと触るのもほほえましい関係性として思われがちですが、これは「親や立場が上の人はいつでも子どもや立場が下の人を触ってよい、触られてもガマンしなくてはいけない」というメッセージにもなり得ます。

まずは、自分との対話を

性的同意を示すためには、「自分との対話」が必要です。

自分が何が好きで、どこまでがよくて、どこからは嫌なのか。明確にその境界線が引ける範囲もあれば、「やってみないと嫌かどうかわからない」「相手や状況によるかも」のように、グレーゾーンとなることもあるかもしれません。

同意を聞かれて、したくないと思う事や、したいかどうか分からないグレーゾーンのことを無理にする必要はありません。自分と相手が「したい」と積極的に望む行為だけ、同意をすれば、より安心で親密なコミュニケーションにつながります

性的同意のキャッチコピーとして、「嫌よ嫌よは嫌なんです」ということを意味する「NO Means NO」がありますが、特に最近は欧米圏では「Yes Means Yes」―つまり「Yes」と積極的に同意をするものだけ同意がとれているという考え方にシフトし、それにあわせて性犯罪についての法改正が進んできています。ただし、気が乗らないのに「Yes」と承諾した経験は誰もがあるものでしょう。真の同意とは何か、考え続けていくことも大切です。

子どもに性的同意をどう伝える?

子どもと接する時も触っていいかを確認したり自分自身が勝手に子どもに嫌だと思う触れ方をした時に嫌だと言って他のコミュニケーションに変えたり日々実践することが大切です。

海外で作られた子ども向けの動画で日本語に翻訳されたものもありますので、ぜひ一緒に見てみるのもおすすです。「同意があるのとないのではどう分かる?」「手をつないで嬉しいと思うのはどんな時?」「もし友達からハグされたくない時にされそうになったらどうやって断る?」などと同意について日常的に話し合うのもいいでしょう。

Consent for kids

同意とコミュニケーション

イエス・ノーどっち?:同意とは【性的同意って知ってる?】

性暴力を防ぐ「第三者介入」

性暴力が起きそうな状況で、その場に居合わせた第三者が、傍観者とならず性暴力を防止したり被害を最小化したりするアクションのことを「第三者介入」と呼びます。たとえば、被害に遭いそうな人に知人のふりをして話しかけたり、誰かを呼んで助けを求めたりするなど様々な方法があります。

しかし、まだまだ日本にはこのような性的同意や第三者介入について学ぶ機会は十分に保障されていません。性暴力のない社会にしていくためには、同意やコミュニケーションについて学ぶ機会をより多くしていくことがとても大切なのです。

【参考】

ちゃぶ台返し女子アクション「あなたらしく大学生活を送るための方法 〜セクシュアル・コンセント・ハンドブック」

執筆

染矢明日香

NPO法人ピルコン理事長。これからの世代が自分らしく生き、豊かな人間関係を築ける社会の実現を目指し、若者と共に中高生向け、保護者向けの性教育講演や情報発信、性教育教材の開発・普及、政策提言等を行う。公認心理師、公衆衛生学修士、思春期保健相談士、慶應義塾大学SFC研究所上席所員。著書に『マンガでわかる オトコの子の「性」』、『はじめてまなぶ こころ・からだ・性のだいじ ここからかるた』。

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ツキとナミ運営事務局

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