2021年 09月29日

運営事務局

世界で妊娠中や産後の女性が亡くなる現実って?

妊産婦死亡という言葉を聞いたことがあるでしょうか。妊娠中や産後の女性が亡くなることです。日本では、妊娠中や産後の女性が亡くなる数は、世界的に見ると非常に少ないです。しかし、世界を見わたすと日本とは違う課題が山積みになっています。今回は、そんな世界の妊産婦死亡についてお話します。

妊産婦死亡とは

妊産婦死亡率とは、出生10万人あたりの妊娠中から産後42日以内の妊産婦死亡数をいいます。妊娠合併症や出産時の出血、感染症、メンタルヘルスの問題など様々なことが原因となっています。

日本の現状

妊産婦死亡の日本の現状は、1990年からの20年間で妊産婦死亡率は大幅に減少した※とされています。2018年では、妊産婦死亡の人数は、10万対して3.3人です。原因は、産科出血19%、脳出血14%、羊水塞栓11%、心臓大血管9%の割合となっています。一方で、産後うつなどのメンタルヘルスの問題による自殺も問題になっています。

※2019年の産科婦人科学会の報告

世界の現状

2019年のユニセフの報告書によると、妊産婦死亡の86%がサハラ以南のアフリカと南アジアに集中しています。紛争の影響を受けている国では、妊産婦の他、新生児、子ども、青少年の死亡率も非常に高くなっており、2019年では、1時間に33人の女性が出産で亡くなっているとされています。妊産婦死亡は適切な時期に妊婦健診を受け、出産時にトレーニングを受けたスタッフのサポート受けている場合、もっとリスクを少なくできます。

しかし、開発途上国の多くの国では、妊婦は妊婦健診を定期的に受けないことも多く、出産も自宅で行うことが多いのです。その理由は、助産施設までの距離が長い、助産所までの交通機関がない、そもそも通える場所に助産施設がないこともあります。また、トレーニングを受けたスタッフがいない場合は家族だけ、または伝統的産婆と呼ばれる村の女性が出産を介助することがあります。

そういった地域では、赤ちゃんのへそを切るハサミがなく、竹などを鋭くして切れるようにしたものを消毒なしで使用することがあります。使い捨て手袋もなく、衛生的な材料なしに出産を行うことがあります。また、出血が多い、血圧が高いなどの合併症が起きた際、薬もないため対応できません。このような状況でのお産は、健康で問題なく出産できる場合もありますが、一度正常を逸脱すると命に関わることになります。

また、出産に対応できる施設や物だけが問題ではありません。以前お話した、女性性器切除の問題も深く関わっていると考えられています。
世界で起こっている「女性性器切除」ってどういうこと?

切除部分の瘢痕化による出血や性器切除に伴い陰唇が縫い合わされている状態の女性では、出産時に切開を加える必要があります。その時の不手際で感染や出血のリスクにさらされます。さらに、妊娠中絶が処罰の対象になっている国では、望まない妊娠では秘密裏に危険な中絶手術を受けることになり、深刻な合併症で死亡するケースもあります。

ミレニアム開発目標とSDGs

2000年にミレニアム開発目標が示され、その一つに妊産婦死亡率の低減が採択されました。ミレニアム開発目標とは、2015年を目標に国連で採択された国際社会共通の目標としてまとめられたものです。

この目標は、妊産婦死亡を4分の3減少させるというもので、実際に1990年では10万人あたり380人だったのが、2013年には210人に減少しました(死亡率は45%減少)。熟練した医療従事者の立ち会いのもとでの出産は、1990年では59%だったのが、2014年では71%に増加したと報告されています。

残された課題は、妊産婦死亡はサハラ以南のアフリカ南アジアに集中していることで、2013年時点で世界帯の数の86%を占めています。熟練した医療従事者の立ち会いによる出産は、東アジアが100%であるのに対してサハラ以南のアフリカと南アジアは52%のみです。

これを受けて新たに定められのが、SDGsです。これは、2030年の実現を目指したもので、17項目が定められています。目標3の「すべての人に健康と福祉を」の中に妊産婦死亡率のさらなる低減が含まれており、2030年までに妊産婦死亡数を10万人出生あたり70人未満まで減らすことが目標です。また、開発途上国の保健サービスに関わる職員の能力や研修を増やすことも挙げられています。

まとめ

現在、少しずつ妊産婦死亡の状況は改善されつつあります。しかし、その道のりは険しいものです。コストや人材、社会システムや地形、宗教や風習などが大きく影響します。日本でもまだ課題が残されています。すべての母親が安全に妊娠・出産ができるようにそれぞれの国で取り組みを進めていく必要があります。

ハッシュタグ

この記事を書いた人

ツキとナミ運営事務局

この作者の記事一覧

同じカテゴリー の他の記事

  1. 家事シェア研究家に聞く!② 家事シェアの4つの型とは

    夫婦・パートナーと家事や育児に取り組む際、「なんだかうまくいかない…」「相手がやってくれなくてイライラする」「自分も頑張っているつもりだけどダメ出しばかりされる」といったお悩みがありませんか?前半では家事シェア研究家である三木智有さんから、家事をパートナーシェアとシェアする大切さやその意義について取り上げました。後半では、引き続き三木さんから、家事シェアの進め方の具体的な方法と、4つの型について教えていただきました。 三木智有/家事シェア研究家・NPO法人tadaima!代表・インテリアコーディネーター リフォーム会社でインテリアプランニング、施工管理、営業販売などの業務を経て独立。現在はフリーのコーディネーターとして活動中。家は家族にとって何より”自分らしくいられる居場所”であって欲しい。という想いから、「10年後も”ただいま!”と帰りたくなる家庭」で溢れた社会の実現を目指し、2011年にNPO法人tadaima!を起業。日本唯一の家事シェア研究家として、家事シェアを広める活動を行っている。 家事シェアの4つの型を知って一番合うものを選ぶ ーー三木さんが家事シェアを具体的にどのように捉えているのかを教えていただけますか? 武道の段階の踏み方に「守破離(しゅはり)」というのがありますよね。守は型を守る段階、破はそれに自分なりの工夫を追加する段階、離は型から離れて自己�

    もっと読む
    2025年 04月24日
    #コミュニケーション
  2. 家事シェア研究家に聞く!① 家事シェアの大切さとは

    夫婦やパートナー間で家事や育児に取り組む際、「なんだかうまくいかない…」「相手がやってくれなくてイライラする」「自分も頑張っているつもりだけどダメ出しばかりされる」といったお悩みがありませんか?家事をパートナーや家族とうまくシェアできていないことが原因かもしれません。「物事を学ぶ際には基本の型を覚えてから少しずつ自分なりにアレンジしていくものなのに、家事については自分の実家のやり方しか参考にできるものがない。だから、基本の型を理解しないまま取り組んでうまくいかなくて四苦八苦しているケースが多くあります」と教えてくれたのは家事シェア研究家である三木智有さん。「家事シェア」という言葉の生みの親でもあり、講演も多く数多く行っている三木さんに、前半は家事シェアの大切さ、後半は家事シェアの具体的な進め方について、詳しく聞きました。 三木智有/家事シェア研究家・NPO法人tadaima!代表・インテリアコーディネーター リフォーム会社でインテリアプランニング、施工管理、営業販売などの業務を経て独立。現在はフリーのコーディネーターとして活動中。家は家族にとって何より”自分らしくいられる居場所”であって欲しい。という想いから、「10年後も”ただいま!”と帰りたくなる家庭」で溢れた社会の実現を目指し、2011年にNPO法人tadaima!を起業。日本唯一の家事シェア研究家として、家事シェアを広める活動を行っている。 家事シェアとは?

    もっと読む
    2025年 04月10日
    #コミュニケーション
  3. 心地よい人間関係の鍵「バウンダリー」とは

    本当は断りたいことも、嫌とハッキリ言うことができない…。つい他の人の世話を焼いてしまい、嫌がられたり疲れたりしてしまう…。相手のちょっとした言動がいつまでも気になってしまう…。友人や恋人、家族の間でも、このような関係性の難しさを感じたことはありませんか? 「バウンダリー(境界・境界線)」を知ることで、心地よい人間関係のヒントになるかもしれません。今回は、人間関係でお互いに安心して自分らしくいられる「人との安全交流」ための考え方を紹介します。 バウンダリーとは 子どもへの暴力防止をめざす予防教育を行う認定NPO法人CAPセンター・JAPAN(以下、CAPセンター・JAPAN)によると、バウンダリーとは、誰もが持っている「こころ」と「からだ」を守る安心・安全な透明カプセルのようなものだと説明しています。 このバウンダリーという概念を持つことで、人との関係性のあり方を意識することができ、自分の気持ちや言動を調整することにも役立ちます。 たとえば、他の人と話す時、どのくらいの距離感が居心地がよいかは人によって違います。相手に触れられても平気という人もいれば、ちょっと離れていた方が安心する人もいます。また、相手との関係性だけでなく、その時の気分や体調によっても変わることもあります。このようにバウンダリーは、状況や関係性によって柔軟に変わりうるものなのです。 しかし、変わらないことが1つあります。それは、「わたしのバウンダリーはわたしが決める」―つまり、「わたしのからだはわたしのもの。わたしのこころはわたしのもの。わたしのことはわたしが決める」ということです。 まずはわたし自身のバウンダリーを意識し、認め、肯定するところから、お互いのバウンダリーを大切にする「人との交流安全」は�

    もっと読む
    2024年 08月16日
    #コミュニケーション
  4. 子どもと大切にしたい、プライベートゾーンと同意

    「子どもにプライベートゾーンをどう教える? 」では、「プライベートゾーン」という言葉についてや、親子でプライベートゾーンについて話す際に保護者 が知っておきたいことなどを取り上げました。今回はその続編とも言える内容で、子どもに同意を取ることの重要性や、保護者が気を付けたい行動などについて、助産師・保育士・チャイルドファミリーコンサルタントのやまがたてるえさんにお聞きしました。 やまがたてるえ/助産師・保育士・チャイルドファミリーコンサルタント 病院勤務後、自身の妊娠出産子育てを経て、地域子育て支援の活動を157年行なっている。たくさんの親子の子育て相談や、女性ためのカウンセリングなども行っています。子育て支援を、家族支援へとシフトチェンジしたくNPO法人子育て学協会のチャイルドファミリーコンサルタントとしても活動中。現在まで6冊の本を出版。近著は【13歳までに伝えたい男の子の心と体のこと】HP: https://www.hahanoki.com/ わが子は自分とは別の人間であり大事な存在 ーープライベートゾーンや同�

    もっと読む
    2024年 08月02日
    #コミュニケーション
  5. 漢方、食養生の始め方・取り入れ方

    「食事を工夫すると健康にいいって聞いたけど、どんなことに気を付ければいいの?すぐできることは何?」という疑問を持っている方もいらっしゃるかもしれません。「食事で体質を改善して健康になる」という考え方に関しては、東洋医学が長い歴史の中で様々な知恵を積み上げてきました。助産師・保育士・チャイルドファミリーコンサルタントのやまがたてるえさんに、「漢方」や「食養生」について教えてもらいました。食事で体質改善して健康になるってどういうこと?どんなことに気を付けて何を食べればいいの?そんな疑問がスッキリします。 やまがたてるえ/助産師・保育士・チャイルドファミリーコンサルタント 病院勤務後、自身の妊娠出産子育てを経て、地域子育て支援の活動を17年行なっている。たくさんの親子の子育て相談や、女性ためのカウンセリングなども行っています。子育て支援を、家族支援へとシフトチェンジしたくNPO法人子育て学協会のチャイルドファミリーコンサルタントとしても活動中。現在まで6冊の本を出版。近著は【13歳までに伝えたい男の子の心と体のこと】 HP: https://www.hahanoki.com/ 東洋医学が大事にする食事や漢方薬での体質改善

    もっと読む
    2024年 07月19日
    #PMS
  6. 生理前のイライラ、原因と対処法は?

    生理前になると、イライラや感情の乱れに悩む方も多いと思います。今回は生理前のイライラへのさまざまな対処法や、効果が期待できる薬について、産婦人科医の柴田綾子先生にお聞きしました。イライラが他の疾患のサインかもしれない場合や、婦人科受診の重要性についても触れています。 産婦人科医 柴田綾子先生 2011年医学部卒業。妊婦健診や婦人科外来のかたわら女性の健康に関する情報発信をおこなっている。著書に『女性診療エッセンス100』(日本医事新報社)など。 生理前のイライラの原因と対処法。効果のある薬は? ーー生理前のイライラの原因と対処法について教えていただけますか? 生理前のイライラはPMS(月経前症候群)の症状として多くの女性が経験しています。 その原因の1つとして、生理前に分泌が増えるプロゲステロン(黄体ホルモン)の影響が考えられますね。生理の初めの方もプロゲステロンの分泌が多かったり、月経困難症の症状として生理中にイライラしたり、情緒不安定になったりすることもあります。 まず、日常生活でできることとして、リラックスできるように、スケジュールを緩めて休む時間を意識しましょう。ストレスがPMSを悪化させること�

    もっと読む
    2024年 07月05日
    #PMS
同じカテゴリー の記事をもっと読む
TOP