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「リプロダクティブヘルス/ライツ」って何だろう?

「セクシュアル・リプロダクティブヘルス/ライツ」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。英語で書くと、「Sexual and Reproductive Health and Rights」となり、「性と生殖に関する健康と権利」と訳されています。初めて聞いたという方も多いと思います。今回と次回の2回に分けて、セクシュアル・リプロダクティブヘルス/ライツについてお話します。
「セクシュアルヘルス/ライツ」って何だろう?

セクシュアル・リプロダクティブヘルス/ライツとは何?

「リプロダクティブヘルス/ライツ」は、1994年にカイロで行われた国際人口開発会議で国際的な承認を得た考え方です。生殖について語られていましたが、セクシュアルな部分もリプロダクティブヘルス・ライツに関係するため、最近では「セクシュアル・リプロダクティブヘルス/ライツ」と呼ばれるようになりました。

この言葉は、「セクシュアルヘルス」「リプロダクティブヘルス」「セクシュアルライツ」「リプロダクティブライツ」という4つの言葉が含まれています。それぞれどのような意味があるか説明してきましょう。

言葉の意味

「セクシュアル・リプロダクティブヘルス/ライツ」は、男女共に持つ権利です。ひとつずつ言葉の意味を解説します。

①「セクシュアルヘルス」

自分の「」について心身ともに満たされた状態で、幸せを感じられ、その状態が社会的に認められていることです。

②「リプロダクティブヘルス」

妊娠したい人、妊娠したくない人、赤ちゃんを産む・産まないということに関して興味や関心がない人、アセクシャルな人(無性愛・非性愛の人)などを問わず、心身共に満たされた状態で健康であることです。

③「セクシュアルライツ」

セクシュアリティ「性」について自分で決められる権利のことです。もう少しわかりやすく説明すると、自分が愛する人、自分のプライバシー、自分の性的な快楽、自分の性の在り方(自分は男である・女である・どちらでもない)について自分で決められる権利です。

④「リプロダクティブライツ」

子供を産むか、産まないか、いつ、何人の子どもを産むかについて自分で決める権利のことです。妊娠、出産、中絶について十分な情報が得られ、「生殖」に関するすべてを自分で決められる権利のことです。

世界の現状

これらの説明を見て、「このようなことは当然だ」と思われた方もいらっしゃるでしょう。しかし、現実は、これらの権利を有しているにもかかわらず、苦しんでいる人が多くいます。リプロダクティブヘルスの歩みは、険しい道であったものの、改善も見られています。例えば、次の表の通り出生率や現代的な避妊方法の利用、妊産婦死亡などにおいて改善傾向を示しています。しかし、まだ目標とするところまで至っていないのが現状です。

 1969年1994年2019年
出生率6.85.63.9
現代的な避妊法の利用24%52%58%
妊産婦死亡※369216(2015年)

※出生10万対の数字

リプロダクティブヘルスは、自発的な家族計画や安全な妊娠、出産のケアなどを含む包括的なリプロダクティブヘルスケアをすべての人々が受けられるように求めています。

本来リプロダクティブヘルス/ライツは守られるべき権利ですが、世界の子どもや女性など守られていない人々が多く存在します。特に開発途上国の人々です。例えば、2億人以上の女性が今もなお、避妊を望みながらも現代的な避妊方法のついての情報を得られず、利用できない状況です。

この理由としては、「正しい避妊についての情報を得る手段がない」「避妊具が高くて買えない」「避妊具が近くに売っていない」「パートナーが避妊に非協力的」などが挙げられます。

子どもを稼業の担い手として考え、教育を受けさせるよりも畑や仕事場に連れ出し手伝いをさせることも多く見られます。女性は、何度も続く妊娠や子育てに疲弊し、もう子どもはいらないと嘆いていることも少なくありません。しかし、子どもは多いほどよいという男性の考えが強いと、女性がピルを服用するといった避妊が許されず、子どもを産むことができる年齢から閉経近くまで、子どもを生み続けている女性がいます。

まとめ

リプロダクティブヘルス/ライツについてお話しました。子どもを産むかどうか、産むとしたらいつか、何人をどれくらいの間隔をあけて産むかなど自分で決める権利があるということです。子どもに関しては、夫婦のことなのでどちらの意見も尊重され話し合うことが大切ですね。

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