ムレやニオイ、気になる夏のデリケートゾーン対策

気温や湿度が高くなる夏は、デリケートゾーンの蒸れが気になる季節です。
デリケートゾーンの蒸れは、どんなトラブルにつながるのでしょうか?
蒸れの原因やデリケートゾーンを快適に保つ方法、肌荒れした場合の対処法・受診目安について、産婦人科医の柴田綾子先生にお聞きしました。


産婦人科医 柴田綾子先生

2011年医学部卒業。妊婦健診や婦人科外来のかたわら女性の健康に関する情報発信をおこなっている。著書に『女性診療エッセンス100』(日本医事新報社)など。

デリケートゾーンの蒸れの原因とトラブル

ーーまず、デリケートゾーンの蒸れにはどういった原因がありますか?

デリケートゾーンが蒸れる原因はいくつかあります。まず、下着の通気性ですね。ナイロン性になっていたり、ズボンもタイトだと、蒸れやすかったりします。
生理中だったらナプキン、生理の前後だとおりものシートが蒸れる原因ですね。長時間座ってたりするのも原因になります。

ーーデリケートゾーンの蒸れから、どういうトラブルが発生しがちでしょうか。

元々、デリケートゾーンは普通の肌よりも弱いので、蒸れたりすると痒みが出やすかったり、おりものが多い時期だとより匂いが気になったりしますね。
また、蒸れからかぶれや肌荒れにつながることもよくあります。

デリケートゾーンを快適に保つ方法

ーーデリケートゾーンを快適に保つために、どんな工夫が考えられますか?下着などの選び方のポイントはありますか?

デリケートゾーンを快適に保つ方法として、下着や着るもの、生理用品の選び方の工夫が考えられます。
まずは、下着とズボンを通気性のいいものにしていただくこと。下着はコットン(綿)製のものがおすすめです。
ズボンを履く場合はスキニージーンズなどピッタリするものではなく、少し緩めのもの、素材が薄めのものを選んでください。スカートならもっと通気性がいいと思います。

ーー生理用品は、どういったものを選べばいいでしょうか。

なるべく薄めで、コットン製のものがいいですね。生理の経血がずっと肌に触れてると、肌が荒れやすかったり匂いの原因になったりするので、こまめに変えるのがいいと思います。
気になる方は、ノンアルコールのウェットティッシュや個包装の清浄綿を別に持っておいて、おりものを拭いていただいたり、トイレでナプキンを変えた後に、デリケートゾーンを拭いていただいたりすると、よりいいと思います。

ーーナプキンを交換する目安はありますか?

普通ナプキンって、2、3時間もつんですよね。ですが夏場や蒸れやすい時期は、1時間ぐらいを目安に交換してもらった方がいいかなと。
もしくは、ある程度慣れは必要かもしれませんが、月経カップと合わせる方法もあると思います。
匂いも気になりにくいというメリットもあります。

ーー布ナプキンについてはどうでしょうか。

布ナプキンの方が肌にとっては優しいと言われることもありますが、布ナプキンは、頻繁に変えるのが難しかったり、吸収力がそこまで強くなかったりして、肌にベッタリくっついてしまうこともあります。そのため、どっちがいいということではなくて、基本は使いやすい方、ご自身にとって快適な方を使っていただくのがいいと思います。
たくさん持っておいてこまめに取り替えるとなると、布ナプキンでも普通のナプキンでも、あまり変わらないという気がします。

ーービデの使用は問題ありませんか?

ビデは、トイレのウォシュレットについていたり、ポータブルタイプのものもありますが、ちょっと注意が必要です。
腟の中には、乳酸菌といういい菌もいて、腟内を酸性に保つことで悪い菌の増殖を抑えています。でも、ビデで腟の中を洗ってしまうと、そのいい菌までいなくなり、腟炎の原因になることもあります。なので、ビデで外陰部の皮膚の部分を洗い流していただいたりするのは大丈夫なんですが、腟の中までは洗わない方がいいですね。生理の経血やおりものがベッタリついた時に拭いたり洗ってもらえば大丈夫で、毎回毎回腟の中まで綺麗にしなきゃいけないってほどではありません。

デリケートゾーンのケアのポイント

ーーデリケートゾーンのケアをする際のポイントはありますか?蒸れの予防としてアンダーヘアの処理をする人もいますが、気を付ける点はありますか?

生理の前や直後は、皮膚が荒れやすいので、その時期はアンダーヘアの処理は避けた方がいいです。
ご自身で剃ったりすると、皮膚の表面のバリア層まで削ってしまうことにつながります。そのため、その後にしっかり保湿しないと、そこからバイ菌が入ってしまったりすることがあるので、剃る場合はその後の保湿までしっかりしてくださいね。

ーーデリケートゾーンの保湿には、どういったものを使えばいいですか?

基本はご自身がボディーに使ってる保湿剤を使っていただければ大丈夫なんですが、今はデリケートゾーン専用の弱酸性みたいなお肌に優しいものも出ています。ボディー用のものをそのまま使ってもいいし、デリケートゾーン専用のものを使っても大丈夫です。ただ、塗るところは皮膚で、腟の中まで入れないようにしていただければと思います。
また、刺激が強い製品はやめた方がいいですね。新しい製品や心配なものは、1番にデリケートゾーンに塗るんじゃなくて、例えば自分の腕など丈夫な皮膚に塗って試してみて、それで大丈夫だったら使うのがいいでしょう。刺激が強すぎると、デリケートゾーンの違和感や痒みの原因になったりすることがあるので注意が必要です。

ーーデリケートゾーン専用の石鹸は、毎日使っても問題ないでしょうか?

デリケートゾーン専用の石鹸は、普通のボディ用よりも弱酸性で低刺激のものが多いです。ゴシゴシこすったりしなければ、毎日使ってもらっても大丈夫です。
ただ、石鹸を使うと表面の皮脂まで落としてしまうこともあるので、その後の保湿はしっかりしてくださいね。デリケートゾーンのケアでは、軽くボディーソープで洗ったり、ぬるま湯で洗い流すぐらいで問題ありません。

蒸れ以外のデリケートゾーンのトラブルの原因

ーー蒸れ以外の、デリケートゾーンのトラブルの原因を教えてください。

デリケートゾーンのトラブルで1番多いのが、おりものの異常です。おりものが匂うとかだとよくあるのが、「細菌性腟症」と呼ばれ、腟の中の乳酸菌が減ってしまって悪い菌が増えてる状態ですね。
こういう場合はおりものが臭くなったりするので、産婦人科に来ていただいて、腟剤を使って治したりしています。

他に多いのがカンジダですね。カンジダは性感染症じゃないんですが、風邪をひいたりして抗生剤を使ったり、体調が悪くなった時に、体の抵抗力が落ちて、カンジダが増えすぎることがあります。白いおりものがたくさん出たり、痒みの原因になったりするんです。産婦人科に来ていただいて、腟剤や飲み薬で治療することもありますし、再発の時は薬局でもカンジダ用の薬も取り扱っていますので、ご自身でケアすることも可能です。

性感染症の場合はデリケートゾーンの痒みで来られる方が多いんですが、クラミジアや淋菌は20代の方に多いので、痒みが出たりおりものが心配な時は、産婦人科で検査して治療をしたりします。更年期の女性は、腟の乾燥がトラブルにつながることが多いです。とくに冬に乾燥がひどい時は、女性ホルモンが減ってデリケートゾーンの皮膚が乾燥する「萎縮性腟炎」の症状が悪化することがあるので、保湿剤を使ってもらったりしますね。

ーーデリケートゾーンにトラブルが起きた時に、病院を受診する目安を教えてください。

まず通気性の良い下着に変えたり、ナプキンを薄くしたり、こまめに拭いたりしていただいて、それで2、3日見ても症状が良くならない場合は受診してください。
おりものがおかしい、おりものが増えた、おりものの匂いが変、デリケートゾーンに痒みがある……そういう時も産婦人科に来ていただきたいと思います。

デリケートゾーンが肌荒れしている時は、薬局で売っているデリケートゾーン用の軟膏などの塗り薬を使ってもらっても大丈夫なんですが、それで様子を見るとしても2、3日間くらいで、それでも良くならなければ、産婦人科に来てもらった方が安心ですね。


デリケートゾーンの蒸れなどトラブルの原因と対処法、肌荒れした場合の受診目安について、柴田綾子先生に教えていただきました。
しっかり対策して、デリケートゾーンのトラブルとは無縁の夏を快適に過ごしたいものですね!

〇ライタープロフィール
きのコ
東京を中心に多拠点生活する文筆家・編集者。すべての関係者の合意のもとで複数のパートナーと同時に交際する「ポリアモリー」として、恋愛やセックス、パートナーシップ、コミュニケーション等をテーマに発信している。不妊治療の経験や、子宮筋腫による月経困難症をきっかけに、女性の身体のことに興味をもつようになった。子無しでバツイチ。著書に『わたし、恋人が2人います。〜ポリアモリーという生き方〜』。

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