
婦人科系の病気はさまざまなものがありますが、今回は私が体験した卵巣のう腫という病気で手術した経験をお話したいと思います。
当時の私の生理痛は比較的軽く、少しお腹が痛いかな?といった位で、生理中だからといって特に制限なく生活していました。そんな生理3日目のこと。突然、今まで感じたことのないような強烈な腹痛に襲われました。
お腹が張るようなそれでいて鉛での入ったのかと思うほどの重さのある何とも言えない痛み。動くことができず、背中を丸めて歯を食いしばって痛みを堪えるので精一杯なほどの痛みでした。30分ほど痛みは続きましたが、少しずつ回復に向かい、普通に動けるようになりました。
卵巣のう腫発覚までの小さな違和感

生理も終わり、あの強烈な腹痛が何だったのか気になりながらも、仕事や遊びにと忙しく過ごしていました。しかし、あの強烈な腹痛以降、何となく下腹部が張っている感覚がずっと残っているような気がしていました。
「なんだろう?便秘かなぁ?」
なんて、呑気にしていたのですが、この頃、知人たちが立て続けに婦人科系の病気にかかったという噂を小耳にはさみ、いつもならこのくらいの体調不良はそのままにしてしまう不精者の私が、ちょっと病院で相談してみようかな?という気になったのです。今思えば虫の知らせだったのかもしれません。
そうはいっても婦人科系の病気だと自分では確信できないので、まずは総合内科で診察してもらったところ、とりあえずエコーでお腹を見てみましょう、とのこと。
そのままエコーでの検査へ。暗い部屋の中で、お腹に冷たいジェルを塗られてエコーの検査機を押し当てられる。検査技師さんが、何度も同じところを往復して検査機を当てている…。そして、「うーん…」とうなるような声が聞こえる。
「え…?何?」
暗い部屋の中で、技師さんのうなり声に不安があおられる。
診断結果はやはり…
エコー検査が終わり、診察室に呼ばれる。エコー画像を見せられながら、説明されたのは、「卵巣のう腫」じゃないか、という診断結果でした。
やはり、見つかったかー、そんな感想でした。薬とかで治るのかなー?なんて、簡単に考えていました。しかし、衝撃はそれだけではありませんでした。
「この大きさだと手術になるかもね」
えええ!先生ってば、さらっと言う!
「しゅ、手術ですか?!」
焦って聞き返すも、先生は落ち着いた様子で、
「婦人科は専門ではないので。婦人科のある病院を紹介するので、そちらで詳しく聞いてね」
そう言われ、それ以上の質問はできませんでした。その後、婦人科のある総合病院を紹介してもらい、そこで詳しく検査することになりました。そして、そこでの診断もやはり「卵巣のう腫」でした。手術は、腹腔鏡手術なので、そんなに傷は残らないよー、と言われ、安心していました。手術は、先生や病院の空き状況から3週間後になりました。
手術直前 冷や汗が吹き出すほどの突然の腹痛
手術までは、それまでと同じように生活していました。仕事に行き、帰って寝る。風邪や体調不良は、手術を引きのばすことになるので、できるだけ規則正しい生活を心がけていたのですが、手術を3日前に控えた日、非常事態が起こります。
仕事に行くために、朝の支度を急いでいると、突然、下腹部がキリキリと痛み出したのです。時間を追うごとに痛みは強くなり、立っていられないほどに。横になってお腹を丸めるように痛みを堪えるも、痛みからか冷や汗がとまりませんでした。
数時間ほど痛みに耐えると少し痛みがましになってきたので、入院予定の病院に電話し、突然の痛みについて説明しました。病院からはとりあえず診察したいので、来てくれとのこと。運転中にまた痛み出してはいけないので、家族に送迎してもらい病院へ。
エコーや内診をしてもらいましたが、のう腫の大きさも変わっていないように見えるし、とりあえず手術まで様子を見ようとなりました。ただし、もう一度痛くなったら、すぐに病院に来ること。そして、その場合には緊急手術になるかもしれないことを伝えられました。
予想外のトラブルに

無事に予定通りの手術を迎えられるのか心配しながらも、何とか再度の痛みは起きず、手術当日となりました。手術室までは歩いていき、自分でベッドに乗ります。手術は全身麻酔です。
「麻酔、入れていきますねー」お医者さんの声が聞こえたかと思うと、意識はなくなり、次に起きた時には手術は終わっていました。
そして、術後、担当医から手術結果について説明がありました。手術自体は無事に終わり、卵巣を残したまま、のう腫だけを取り除くことができました。とりあえずはひと安心です。手術の結果、子宮内膜症が卵巣におこる「チョコレートのう胞」の可能性が高いということが分かりました。
しかし、手術の前に、のう腫が少し破れていた可能性がある、とのことでした。手術前に感じた下腹部の痛み、もしかしたら、あの時にのう腫が破れ中身が少し、体内にもれてしまったかもしれない、という説明でした。
「破裂したわけじゃないし、少しのう腫の中身がもれただけで、何がだめなんですか?」
そう質問すると、先生は少し苦々しい顔で
「のう腫の原因というか、簡単にいうと種みたいなものがもしかしたら残ってしまったかもしれない。そうすると、その「種」から再発してしまう可能性があります」
手術すれば、もうそれで治るものと思っていた私は、言葉を失いました。
術後の1年間、月に一度の注射治療

術後の説明では、約半年間、強制的に生理をストップさせることで、先生のいう「種」となるものの成長を止め、内膜症が再発しないようにしたいということでした。突然の治療延長宣言に、思考停止状態に陥った私にも分かるように、とても嚙み砕いて説明してくれたので、なんとか理解できました。
その後、術後10日程で退院し、そこから、月に一度の通院が始まりました。簡単な診察後、お腹に生理を止めるための注射をします。看護師の方に、いつも「あんまり見ないほうがいいかもー」なんて、笑いながら言われていたのですが、何度目かの注射のとき、思い切って注射をしているところを見てみたのです。そして、すぐに後悔しました。
その注射針は、芯の出ていないシャープペンシルのような太さだったのです。確かに普通の注射より痛いなーとは思っていたのですが、お腹に直接刺すからかなぁ、なんてのんきに考えていました。…いや、シャーペンお腹に刺したら、そりゃ痛いよね!看護師さんも、笑っちゃうくらい太いよね!
そこから、毎月の注射の時に、お腹に力を入れないでねーと言われるようになってしまいました・・・。だって今からシャーペン刺されるんだと思ったら、力まずになんていられません。「見ないほうがいいよ」と言ってくれていた看護師さん、ほんとその通りでした。すみません。
生理をストップさせることで、もしかしたら「更年期障害」のような症状が起きるかもしれないと言われていましたが、幸いにも大きな症状は現れず、半年の治療を終えました。
そして、治療終了の1年後、無事に妊娠・出産しました。
あの時、病院に行ってなければ、抱けなかったかもしれない温もりです。体の痛みは、体からの悲鳴なのです。その声を聞き逃さず、少しのことでも病院で検査してみることをおすすめします。
ライタープロフィール
横田 万由美
奈良県在住のフリーライター兼デザイナー。子どもの頃からの本好きが講じて、言葉の面白さに目覚め、知識を深めるため大学では中高国語科教員免許を取得。卒業後は出版社→デザイン制作会社勤務を経て、結婚・出産後、フリーランスライターに。
人との会話の中で端々に現れる感情や志を汲み取り、言葉を紡ぐのが得意。小学生姉妹の子育て中で、女の子特有のカラダの変化やその大切さをどのように伝えるか日々試行錯誤中。