もし不正出血が起こったら?原因と対処法
腟からの出血は、生理ばかりが原因とは限りません。生理ではない出血のことを「不正出血」といいます。
突然の出血に不安になる方もいるかもしれませんが、不正出血の原因や対処法にはどういったものがあるのでしょうか。
検査や治療法も含めて、産婦人科医の柴田綾子先生にお聞きしました。
産婦人科医 柴田綾子先生
2011年医学部卒業。妊婦健診や婦人科外来のかたわら女性の健康に関する情報発信をおこなっている。著書に『女性診療エッセンス100』(日本医事新報社)など。
不正出血とは?
ーーそもそも「不正出血」とはどういうことを指すのでしょうか?
月経(生理)ではないタイミングでの出血を「不正出血」と言います。
よく「生理と不正出血は色や日数で見分けられますか?」と訊かれるんですが、色が赤いからとか茶色だからとか、数日で終わったからとか、そういうことでは見分けられません。基本的に生理と不正出血は見分けがつかないことが多いですね。生理が不順で、不正出血なのか生理なのか分からない方も実際いらっしゃいます。
不正出血の原因
ーー不正出血が起こる原因について教えてください。
生理ではない出血を全部まとめて不正出血というので、いろんな原因があります。
1つは女性ホルモンのバランスが崩れるなどのホルモン異常ですね。
他には、性感染症でクラミジアとか淋菌があったり、腟の中で炎症が起こっている腟炎です。
また炎症が起こっているとその粘膜や子宮の入口の細胞がもろくなり、摩擦で出血してしまうことがありますね。
子宮頸がんや子宮内膜のポリープということもありますし、あとは子宮の異常として、例えば子宮筋腫とか子宮腺筋症があったりすると出血しやすいです。子宮筋腫のせいで不正出血が起こることもあります。とくに筋腫が子宮の内側にできてる粘膜下筋腫だと、どうしても筋腫が子宮の中に突出してるので、そこから出血してしまうことがありますね。
私達産婦人科医が1番心配してるのはがんです。子宮頸がんとか子宮体がんが不正出血の原因になることがあります。
ーーセルフプレジャーの時に腟から出血してしまう時はどのような原因が考えられますか?
腟の粘膜とか子宮の入り口を傷つけてしまってる可能性があると思います。
また、毎回出血するという場合には、腟の中の炎症とか、子宮の入口の性感染症の可能性がありますね。
不正出血の対処法
ーー不正出血が起きた時には、どういった対処法がありますか。
不正出血って何が原因で起こっているのかは、診察してみないとわからないんですよ。ただ、毎回やっぱり不正出血が起こるたびに受診するのも大変ですよね。
まず1つは、がんが隠れてるのが私達産婦人科医にとっては心配です。特に若い方には子宮頸がんやその前段階(異形成)も多いです。
直近2年間で子宮頸がん検診を受けていない時は、不正出血があったら近いうちに1度産婦人科で子宮頸がん検診を受けてほしい、というのはあります。
子宮頸がん検診の2年に1回というのは目安なので、2年以内に行ってたら絶対大丈夫というわけではありません。不正出血がある時に、もし子宮頸がん検診を1年受けてなかったら、もう1回検査を受けてもらってもいいと思います。
もう1つが性感染症ですね。もし性行為をした時にコンドームをちゃんとしてないようだったら、性感染症が不正出血の原因かもしれないので、クラミジアや淋菌の検査をしてほしいと思います。
「不正出血がどれくらい続いたら受診が必要か」に決まったルールはありません。私は、3日ぐらい不正出血が続いているのであれば、受診をおすすめしています。不正出血がもし1日で止まり、それ以降は全然続かないようであれば、その時は受診は必須ではないと考えています。もしそれが2回3回と繰り返すようだったら、ぜひ受診に来てほしいと思います。
生理周期を自分で把握してなくても、産婦人科を受診して大丈夫ですが、最近の生理日の情報を教えてもらえるとより助かりますね。
ーー1日で止まってしまう不正出血の場合はあまり心配しなくて大丈夫なのでしょうか?原因としてどんなことがありますか?
1つ考えられるのが「排卵期出血」です。生理と生理の大体真ん中ぐらい、もっと具体的に言うと次の生理が始まる2週間前ぐらいに、排卵が起こるんですね。排卵の時に1日だけ出血する方もたまにいらっしゃるのですが、そのような排卵時の出血はあまり心配しなくていい不正出血です。
ただ排卵期出血とそうじゃない不正出血の見分けがなかなか難しいのですよね。出血が続いたり、複数回あっても「排卵期出血だ」と決めつけて見逃してしまうのはやはり心配です。
不正出血の検査・治療
ーー不正出血がある場合、どのような検査をするのでしょうか?
まず子宮頸がん検査をさせてもらうことが多いですね。子宮体がん検査もするかどうかは、患者さんと相談して決めています。
子宮頸がん検診は子宮の入口をブラシでこする検査で、強い痛みがでることは少ないです。あとは、性行為の有無とか、コンドームの使用の状況を聞いて、クラミジアや淋菌などの性感染症の検査をするかどうかをご本人と相談することになります。
それから例えば子宮の入り口(頸部)のポリープや、子宮筋腫とか子宮腺筋症がないかをエコーを使って診る検査がありますね。
何回も不正出血しているという人は、女性ホルモンの異常がないかを採血をして確認します。どういう原因で不正出血してるかによって、いろいろな検査の選択肢がありますね。外から見ただけだとどの原因か分からないので、患者さんのお話を聞きながらどの検査をするか、相談していくことになります。
ーー不正出血の治療法について教えてください。
不正出血の多くは深刻な問題はなく、調べてもよくわからないことも結構たくさんあります。その場合はまず一旦、そんなに深刻な原因はなかったから様子を見ましょう、というのが1つですね。
ただ、月経不順があり、生理なのか不正出血なのかよく分からない時は、ホルモンバランスを整えるという意味で低用量ピルをおすすめすることがあります。
もし、クラミジアとか淋菌など性感染症があれば、それに対してお薬(抗生剤)を処方することになります。
またポリープができてる時は、子宮鏡という子宮の中に入れるカメラみたいなものでポリープをとったり、本当に小さくてすぐ取れるものであれば、外来の内診台でポリープを取らせてもらうこともありますね。
もし、子宮筋腫が原因で不正出血がしょっちゅう起こっていて、ご本人が困ってるという時は、手術で筋腫を取ったり、女性ホルモンの薬を使って出血を止める治療をします。
子宮筋腫の原因や治療について、詳しくは「子宮筋腫と診断されたらどうする?」もご参照ください。
不正出血の原因や対処法、検査や治療法について、柴田綾子先生に教えていただきました。
不正出血とひとことで言っても、その原因にはさまざまなものがあります。出血に痛みがなくても少量であっても、病気が隠れている可能性を考えて、心配な時は産婦人科の受診を検討してみてほしいと思います。
〇ライタープロフィール
きのコ
東京を中心に多拠点生活で旅する文筆家・編集者。すべての関係者の合意のもとで複数のパートナーと同時に交際する「ポリアモリー」として、恋愛やセックス、パートナーシップ、コミュニケーション等をテーマに発信している。不妊治療の経験や、子宮筋腫による月経困難症をきっかけに、女性の身体のことに興味をもつようになった。子無しでバツイチ。著書に『わたし、恋人が2人います。〜ポリアモリーという生き方〜』。