普段からできるデリケートゾーンのケアって?

日々の健康と身体的な快適さを保つ上では、デリケートゾーンのケアが大切です。特に、冬の乾燥した季節や生理中など、肌が敏感になるタイミングでは、適切なケアが必要不可欠。
今回の記事では、産婦人科医・柴田綾子先生のアドバイスをもとに、おりものやデリケートゾーンの乾燥に対応するセルフケアの方法や注意点、そして性感染症の兆候について解説します。


産婦人科医 柴田綾子先生

2011年医学部卒業。妊婦健診や婦人科外来のかたわら女性の健康に関する情報発信をおこなっている。著書に『女性診療エッセンス100』(日本医事新報社)など。

外陰部やおりものに関するよくあるトラブルと、セルフケアの方法

ーーまず、デリケートゾーンのケアについて伺います。普段の健康な時でもおりものが気になることがあると思いますが、そういった時にどういうケアができるでしょうか。

特に冬のような乾燥した季節は、デリケートゾーンの乾燥からくる症状も増える傾向があります。そのため、普段からできるケアとしては「保湿」が大切です。普段顔に使っている化粧水やボディクリームをデリケートゾーンの皮膚の保湿に使うのも良いでしょう。腟の中にまでは塗る必要ありませんが、外陰部の皮膚を顔と同じようにケアしていただくと良いですね。保湿アイテムにはデリケートゾーン専用のものもありますが、専用でないといけないというわけではありません。ただし、デリケートゾーンは手などよりも肌が敏感なので、刺激の強い化粧品や香りが強いものは避けてください。
また、生理の前後は蒸れやすかったり、生理の血やナプキンで肌が荒れることがあります。そのため、生理中やおりものが多い時には、ナプキンやおりものシートをこまめに取り替えることも重要です。

ーーおりものの匂いが気になるという人も多いです。対策として何かできることはありますか。

おりものは長時間放置すると匂いが発生しやすくなるので、おりものシートを交換したり、通気性の良い服装を心がけることが効果的です。
また、それでも匂いが気になる場合は細菌性腟症の可能性があります。産婦人科で腟剤や内服薬を処方してもらうことで、改善が期待できると思います。

ーーでは、外陰部やおりものに関するトラブルの中でも、病院受診が必要なものについて教えていただけますか。

産婦人科でよくあるのは、痒みやおりものの量、匂いに関する相談ですね。おりものが多いと感じる方でも、実際には正常な範囲内であることが多いです。排卵時や生理前は正常な状態でもおりものが増えることがありますので、その場合は問題ありません。ただし、クラミジアや淋菌などの性感染症や、カンジダ、細菌性腟症といった腟内環境の乱れが原因の場合もあります。そのため、いつもと違う症状が2~3日以上続く場合や、痒みや匂いが強い場合は、産婦人科での検査をお勧めします。

病院に行った方が良い外陰部やおりもののトラブル・症状

ーー性感染症のお話が出ましたが、具体的にどのような症状が多いのでしょうか。

性感染症で最も多いのはクラミジアです。ただ、女性の場合、クラミジアに感染しても無症状であることが多いんです。症状がある場合は、おりものの増加、痒み、匂いの変化、あるいはおりものの色がいつもと違うなどが挙げられます。おりものの色の変化としては、黄色っぽさが強くなったり、緑色が混ざる場合があります。ただ、繰り返しになりますが、感染しても症状が出ないことも多いので注意が必要です。

ーーおりものの増加はどのくらい続くと「普通ではない」と判断すべきでしょうか。

明確な定義はありませんが、私は通常2〜3日程度と説明していますね。おりものの増加がそれ以上続く場合や、セルフケアをしても改善が見られない場合は、産婦人科での診察をおすすめしています。

ーーまた、病院に行くほどではない場合にできるセルフケアについても教えていただけますか。

まず、痒みが強い時やおりものが多い時は、通気性の良い下着や服装にすることが大切です。例えば、下着をコットン製にしたり、ズボンもきつすぎず通気性の良いものにすることをおすすめします。また、生理中やおりものが多い時は、おりものや血液が皮膚に長時間触れると痒みの原因になるので、おりものシートをこまめに交換したり、清浄綿でデリケートゾーンを軽く拭くことも効果的です。

おりものシートや腟洗浄などのグッズの取り入れ方や注意点

ーーおりものシートや腟洗浄グッズについて、適切な取り入れ方を教えていただけますか。

おりものシートは肌に優しい素材のものを選ぶと良いですね。一方、腟洗浄については注意が必要です。腟の中を洗いすぎると、必要な乳酸菌まで洗い流してしまい、却って細菌性腟症やカンジダになりやすくなることがあります。ですので、腟洗浄グッズを使う場合でも、頻繁に使用するのは控えた方が良いでしょう。

ーー例えばビデの使用については、具体的にどの程度なら大丈夫なのでしょうか。

ビデは、生理中やおりものが多い時にたまに使う程度なら問題ありません。ただ、定期的に使うのは避けた方が良いでしょう。頻度については明確な基準はありませんが、気になる時だけ使うのが良いですね。
例えば、1日1回でも、症状がなく問題なく使えているなら特にダメというわけではありません。ただ、腟の中をゴシゴシ洗ったり、洗いすぎて乳酸菌が減るとトラブルの原因になりますので、軽く使う程度に留めるのが良いですね。症状がなければ続けても良いですが、違和感やトラブルが出る場合は控えてください。
シャワーで洗う場合も、腟の中に指を入れてゴシゴシと洗う必要はありません。腟の中は自浄作用があるので、外側を清潔に保つ程度で十分です。

ーーカンジダや細菌性腟症は腟内の乳酸菌が減ることで起きると聞きますが、乳酸菌を増やすにはどのような方法があるのでしょうか?

研究段階ですが、腸内細菌と腟内細菌が関連しているという仮説があります。そのため、腸内環境を整える整腸剤を服用したり、乳酸菌を含む食品を摂取することで、間接的に腟内環境が良くなる可能性があり、現在研究が進められているところです。ちなみに、食べるヨーグルトと腟内に使う乳酸菌は成分が異なりますので、食用のヨーグルトを腟内に入れるのはおすすめできません。

ーー規則正しい生活やストレス管理も関係しますか?

はい、免疫力が低下するとカンジダなどが発症しやすくなるので、規則正しい生活やストレス管理は重要です。また、抗生剤を使用した後は特に注意が必要です。体調を崩したり風邪を引いた後に発症する方も多いので、体調管理も大切です。


デリケートゾーンのケアは、自分自身の体を大切にする第一歩。乾燥や痒み、おりものの増加といった一般的なトラブルは、保湿や通気性の良い下着の選択、適切なおりものシートの使用など、日々の習慣で改善できます。

しかし、いつもと異なる症状が続く場合は、早めに専門医を受診することが大切です。セルフケアと病院の受診を適切に組み合わせ、デリケートゾーンに安心で快適な環境を手に入れましょう。

〇ライタープロフィール
きのコ
東京を中心に多拠点生活する物書き。マッチングサイト会社の広報。すべての関係者の合意のもとで複数のパートナーと同時に交際する「ポリアモリー」として、恋愛やセックス、パートナーシップ、コミュニケーション等をテーマに発信している。不妊治療の経験や、子宮筋腫による月経困難症からの子宮全摘出をきっかけに、女性の身体と健康に興味をもつようになった。子無しでバツイチ。著書に『わたし、恋人が2人います。〜ポリアモリーという生き方〜』。

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ツキとナミ運営事務局

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