「食事を工夫すると健康にいいって聞いたけど、どんなことに気を付ければいいの?すぐできることは何?」という疑問を持っている方もいらっしゃるかもしれません。「食事で体質を改善して健康になる」という考え方に関しては、東洋医学が長い歴史の中で様々な知恵を積み上げてきました。助産師・保育士・チャイルドファミリーコンサルタントのやまがたてるえさんに、「漢方」や「食養生」について教えてもらいました。食事で体質改善して健康になるってどういうこと?どんなことに気を付けて何を食べればいいの?そんな疑問がスッキリします。


やまがたてるえ/助産師・保育士・チャイルドファミリーコンサルタント

病院勤務後、自身の妊娠出産子育てを経て、地域子育て支援の活動を17年行なっている。たくさんの親子の子育て相談や、女性ためのカウンセリングなども行っています。子育て支援を、家族支援へとシフトチェンジしたくNPO法人子育て学協会のチャイルドファミリーコンサルタントとしても活動中。現在まで6冊の本を出版。近著は【13歳までに伝えたい男の子の心と体のこと】

HP: https://www.hahanoki.com/

東洋医学が大事にする食事や漢方薬での体質改善

ーー最初に「漢方」や「食養生」がどういうものなのかを教えていただけますか?

漢方は、中国で約2000年前から発展した伝統的な医学を指します。自然の中にある植物、動物、鉱物などから作られた薬を使って、人間の体のバランスを整え、体質改善に向けてアプローチします。体質や症状に合わせて、様々な成分を組み合わせた処方が特徴です。健康維持や病気の予防、治療を目的としています。

ーー漢方は、自然の中にあるものを組み合わせて薬をつくって、体質改善や健康維持、病気の予防や治療をするんですね。食養生はどんなものでしょうか?

食養生とは、健康を維持していく食事を生活の中に取り入れて病気になる前に病気を防ぐこと。食事を基本にして健康の維持や病気を防ぐことを大事にするという考え方、というと分かりやすいかもしれません。漢方の考え方に基づいて食事で体調を整えることにつながります。

ーー「病気になる前に病気を防ぐ」という言葉がありましたが、東洋医学には「未病」という考え方があるそうですね。

はい。「未病」とは、病名はつかないけど、「何となくだるい」「食欲がない」という感じで、健康とも病気とも言えない間をさまよっている状態を言います。

疲れやすい、だるい、ちょっと頭痛がするなど、症状はあるけれど病気の診断はつかない、不定愁訴のような状態を食養生で整えていくことを東洋医学は大切だと考えています。

ーー西洋医学と東洋医学では、どのような点で違いがあるのでしょうか

西洋医学では、病名をつけてそこにアプローチしたり、その症状を和らげるお薬を処方したりします。対処療法的な側面があります。

東洋医学は体質改善が中軸になって、未病のうちに体調を整えて健康のほうに寄せていく考え方になります。

アプローチの違いはありますが優劣や良し悪しはないと考えています。その時々で必要なものを取り入れられるといいと思います。

ちなみに、ハーブを活用した治療は、植物由来の化学物質を使って体調や体質を整えるという考え方をしている点で、漢方と近いです。

ーー症状に対処していく西洋医学と、体質改善を図る東洋医学、という違いが分かりました

東洋医学では体質を改善して体調を整えていくことで症状が軽くなっていく、というふうに考えます。だから症状の改善まで時間がかかることもあります。

漢方薬には、複数の薬に似たような効能が謳われていることがあります。例えば、更年期の「肩こりに効く」と書いてある漢方薬は、代表的なものだけで3つありますが、人によってどれが効くのかが異なります。これは元々持っている体質によるものなので、体質を見極めて処方する必要があります。そういう考え方は漢方薬の特徴かもしれません。

ーー東洋医学では体質をどういうふうに考えているのかを教えていただけますか?

「証」(しょう)というものがあって、それが体質の大きな目安と言われています。証を理解して自分に合った食事や漢方薬を摂っていけるといいですね。

実証(じつしょう)は、体格がよく、暑がりで筋肉質、パワフルな感じの体質を指します。

虚証(きょしょう)は、色白、骨格が細い、体力がない感じの体質を指します。

人間は実証と虚証の間を揺らいでいるものなのですが、どちらかに偏りすぎるのではなく、その中間くらいが良いと考えられています。

東洋医学では、「気」「血」「水」という言葉が登場することがあります。「気」(き)は私たちの意識を、「血」(けつ)は血液を、「水」(すい)は血液以外の水分を、それぞれ指します。体内でのこれらの巡りが滞ってくると病気になっていくと考えます。

虚に偏りすぎると、気が無くなって「気虚」(ききょ)と呼ばれる状態になったり、血液が無くなって「血虚」(けっきょ)になってしまったり、逆に実に偏って血液が滞ると「瘀血(おけつ)」という状態になってしんどくなったりします。瘀血の時は熱を摂ってくれる食べ物を食べて身体を冷ますようにします。とにかく「バランスよく」が一番大事です。

バランスよく、胃腸に優しい、旬のものを食べる

ーー食養生のオススメの取り入れ方について教えてください

食養生はバランスよく食べることが基本です。

また、胃腸の消化にいいものを摂ることが大切です。食材だけでなく胃腸への負担についても考慮してもらえるといいかと思います。

例えば、スープのように煮込んだものがいい、電子レンジではなく火を使って温めたものがいい、生ものよりも温かいものを摂ったほうがいい。こんなふうに言われるのは消化や吸収にいいからです。

最近は、炭水化物を抜く食事の摂り方もありますが、お米は胃腸にもいいですし水分も摂れます。長い間日本人の身体がお米を食べてきたことを見直してお米とみそ汁の組み合わせは取り入れやすいと思います。お米の他にも、豆腐、かぼちゃ、さつまいも、きのこ、栗、なつめなどの食材がおすすめです。参鶏湯(サムゲタン)とかすごくいいですね。出来合いのものでもいいものが色々あります。

また、ものを食べることも大事ですね。

夏にトマトやキュウリが出るのは、水分が多いからです。夏の暑いときに汗をかいて水分を失った身体に、トマトやキュウリの水分を補給して、身体の中の水分を保持することにつながります。

ーーほかにもおすすめの食材はありますか?

取り入れやすいものとして、温かい黒豆茶もおすすめです。

黒いものなので気を養ってくれます。また豆は気も血も養う食べ物です。

そのうえ西洋医学的にはイソフラボンが含まれています。 アンチエイジングやホルモンバランスを整える、不眠解消、利尿作用などもあるとされていて、特に女性にとってはメリットが多い食材です。

編集部メモ

●気を補う食生活●
胃腸の不調が気をうばうことがあります。冷たいものより、温かいもの、脂っこいものや、甘いものを控えるなど、満腹になるまで食べず胃腸に優しい食事をすること。
・食材は、お米、豆腐、かぼちゃ、さつまいも、きのこ、栗、なつめ、など

●血を補う食生活●
生理などで女性は周期的に血を補った方がいいと考えられます。また、胃腸への負担もすくない優しい食事をお勧めします。
・食材:(黒い食材)黒豆、黒舞、ほうれん草、黒ゴマ、鶏肉、豚肉、牛の赤身、卵、レバー、レーズンなど

●潤いを補う食生活●
水分はすぐに尿として排泄されますが、水分の多い食事はゆっくり胃から腸にいって吸収され水分を体に与えてくれます。水分の多いお野菜などをお勧めです。
・食材:(白っぽい食材)はちみつ、ゆり根、きゅうり、白菜、リンゴ、なしなど

やまがたさんオススメの書籍とWebサイト

書籍

Webサイト

漢方ライフ https://www.kampo-sodan.com/

Kampoful Life by クラシエの漢方 https://www.kracie.co.jp/kampo/kampofullife/

ーー最後に、読者の方にこれも伝えたいということがあれば聞かせてください

よく寝てほしいと思います。食事も大事ですが、「とにかく寝て!」と伝えたいですね。忙しくて寝ていない人が多いです。さっきは食材や食べ方の話なんかをしましたが、それと同じくらい、あるいはそれ以上に、寝てほしいです。すべての女性に寝てほしい。

寝不足が蓄積すると身体の疲れが取れなくなってきて、色々なことに影響します。つい何かやっちゃって休めない人が多いですが、身体を休めることをもっともっと意識してほしいです。 自分の食事を見直したり、暮らしに優しくしていくなかに、少しでも早く寝ることも意識的に取り入れていくと、体調改善に役立ちます。

取材・執筆
柳田正芳 from 性の健康イニシアチブ/合同会社6483works
「誰もが自分は自分に生まれてよかったと思える世界」を作るために「どこに行っても性の健康を享受できるように社会環境をアップデートすること」を目指す性の健康イニシアチブの代表。2002年から国内外の性教育、性科学の様々な活動に参加してきたほか、思春期保健や両親学級などの活動も経て現在に至る。また、編集/校正業、執筆業などを業とする合同会社6483worksの代表としても活動。インタビュー記事の制作を得意とする。
性の健康イニシアチブ https://sexualhealth-initiative.org/
合同会社6483works https://6483works.tokyo/

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ツキとナミ運営事務局

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