生理前に体がむくんだりイライラするなど、心身の不調を感じる方は多いのではないでしょうか。そういった症状はPMS(月経前症候群)と呼ばれています。
今回はPMSとその原因や症状、対処法や治療について、産婦人科医の柴田綾子先生にお聞きしました。


産婦人科医 柴田綾子先生

2011年医学部卒業。妊婦健診や婦人科外来のかたわら女性の健康に関する情報発信をおこなっている。著書に『女性診療エッセンス100』(日本医事新報社)など。

PMSの原因とは

ーーまず、そもそもPMSとは何ですか?

月経前症候群(Premenstrual Syndrome : PMS)は、月経(生理)の起こる3〜10日前に体や心に不調が出て、生理が始まるとそれが自然に治るというのが、PMSの特徴です。ただ、生理の前に何らかの症状が起こるということは、結構多くの女性が経験しています。
その症状で生活に支障があったり、仕事や人間関係に悪影響が出て本人が困っているというのが、1つのPMSの目安になると思います。

ーーPMSが起こる原因は何でしょうか?

PMSの原因には、いろんな要素が混じっていると今のところは考えられています。なので、「原因はまだはっきりと分かっていません」というのが答えなんです。ただ、よく言われている原因の1つは「女性ホルモンの変化」です。
女性ホルモンにはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2つがあって、エストロゲンに比べてプロゲステロンの量が多い時期を黄体期といいます。ここがちょうどPMSの症状が出る時期と重なるので、このプロゲステロンによる影響が大きいのではないか、というのが1つの説です。
他にも、脳の神経物質の中のセロトニンの影響という説や、神経伝達物質を受け止めるGABA受容体が影響しているのではという説があります。

様々なPMSの症状

ーーPMSにはどういった症状がありますか?

PMSの症状には大きく分けて、体の症状と心の症状があります。
体の症状でよくあるのはむくみですね。手足がむくんだり、胸が張ったりといったことです。
あとは頭痛や、お腹や腰の痛みを感じる人も多くいます。

心の症状としては、気分の落ち込みや、イライラなどがあります。
あとは、過食になったり、引きこもって人との接触を過剰に避けたり、過眠と言って寝すぎてしまう、眠気が全然とれないなどの症状もあります。
大体同じタイミングで生理前に症状が出て、生理が来ると自然に治るのを繰り返していたら、PMSの可能性が高いと思いますね。
PMSの症状って他にもたくさんあるので、ここにない症状でもPMSの可能性はあります。

自分でできるPMSの対処法

ーー自分でできるPMSの対処法を教えてください。

PMSは、ストレスが症状を悪化させると言われています。
なので、まずご自身で生理が来るタイミングやスケジュールを管理していただくセルフケアが考えられます。今だとアプリを使っている方が多いと思うんですが、いつ生理が来そうかチェックしていただいて、生理の前はなるべく大きいイベントやストレスがたまりそうなことを避けてスケジュールを調整することもセルフケアの1つです。
それ以外にも、ストレスを緩和するようなリラックスできることもすごく大事です。生理の前に積極的な気分転換や入浴もいいでしょう。生理の時にお風呂に浸かるのを避けがちな人もいますが、むしろお風呂で体をリラックスさせた方がいいですね。つらい時ってなかなかお風呂に入りにくいというのはあると思うんですが、やっぱりストレスがあるとPMSも生理痛もひどくなりがちなので、あったかいお湯に浸かるのはオススメです。
定期的な運動も効果があると言われているので、ヨガやストレッチやジョギングやお散歩など、体にあまり負荷がかからない軽い運動をしていただくのもいいでしょう。
他に自分でできることとしては、カルシウムやマグネシウムはPMSの症状を緩和すると報告されているので、生理の前に積極的に摂っていただくのも1つです。食事で摂りにくい方は、サプリメントでもいいと思います。
また、アルコールや喫煙は症状を悪化させると言われているので、それらの症状がつらい時は避けた方がいいです。

ーー漢方や市販薬はありますか?

はい、漢方や市販薬という選択肢もあります。
当帰芍薬散・桂枝茯苓丸・加味逍遥散は三大漢方と呼ばれていて、この3つは生理痛でもPMSでも更年期障害でも、多くの女性の症状によく使うんですね。貧血やむくみとか生理痛によく効くと言われているものが、当帰芍薬散です。
ただ、漢方は体質によって合う・合わないがあるので、まずはお医者さんに相談した方がいいでしょう。漢方を処方する専門の先生は、「証」と呼ばれる体格や体の特徴、体との相性を見て、この漢方が合うんじゃないかというのを調整します。
漢方にはたくさん選択肢があり、今は産婦人科じゃなくても漢方に詳しい先生はたくさんいます。漢方内科や漢方薬局などで相談されてもいいと思います。

市販薬では「命の母」という漢方の成分が入ったものや、「プレフェミン」というチェストベリーの成分が入っているPMS用のサプリメントがあります。
粉薬の漢方が苦くて飲みにくい方にも、こういった市販薬やサプリメントは手軽に飲んでいただけると思います。

PMSの病院受診の目安と治療

ーーPMSの症状が出た時に病院を受診する目安を教えてください。

基本的にはご本人が生理前の症状で困っているなら、産婦人科を受診してほしいです。
ただやっぱりまだまだ社会的な認知度も低いし、産婦人科医の問題意識に差があることもあります。実際はPMSってものすごくQOLを落とすものなので困っている方はぜひ受診して治療法を相談してください。

ーー病院ではどのような治療が受けられますか?

漢方や市販薬以外では、病院受診で処方される低用量ピルを服用して、女性ホルモンの波を整え、排卵を抑える治療法があります。
海外ではPMSの治療として女性ホルモンを抑える内服薬や注射などその他の選択肢もあるのですが、日本では基本的に漢方や低用量ピルが中心になります。

ーーPMDDなど、PMS関連の病気について教えてください。

PMSと関連する病気に月経前不快気分障害(Premenstrual Dysphoric Disorder:PMDD)というのがあります。
PMSの中でも精神症状が強くて、その症状が原因で人間関係や社会生活に悪影響が出ているものです。具体的には生理の前になると情緒が不安定になってしまって、突然泣き出したり、人間関係が全然うまくいかなくなったり、あとは仕事や学校生活が全然できなくなってしまうなどです。極端に人との接触を避けて引きこもってしまったり、逆にものすごく攻撃的になってしまって、自分で全然コントロールができなくなったりもします。
PMDDの場合は精神的な症状がものすごく強いので、精神科や心療内科の受診が必要になる方が多くて、治療の内容も精神科のお薬が中心になります。たとえばSSRIと言って、セロトニンの受容体に作用する抗鬱薬をメインで使って治療していることが多いと思います。低用量ピルも使用しますが、精神的な症状が強い場合は、精神科で使っているお薬の方が症状が改善しやすいですね。
PMDDの診断基準としては、たとえば著しい情緒不安定や、著しい苛立たしさという感じで、「著しい」心への影響があります。あとは日常生活が全然できなくなってしまうぐらい社会的な活動に影響が出ているというのが、1つの指標です。「もしかしてPMDDかな」という時は、婦人科・産婦人科や精神科、心療内科で相談ができます。

ーーPMSと思春期や更年期が重なって、より酷くなることもありますか?

はい、PMSと思春期・更年期が重なってつらさが増すことはあります。まず思春期の方というのは、学校からのストレスが結構大きいので、やっぱりそのストレスが症状悪化の原因になりやすいです。

また、更年期の症状がPMSと重なって出てしまうこともあり、すごくつらいと思います。思春期や更年期の場合も、婦人科・産婦人科にご相談いただけたらと思います。


PMS(月経前症候群)の原因や症状、自分でできる改善法や病院での治療について、柴田綾子先生に教えていただきました。

生理前に心身の不調を感じる方は、決して少なくありません。「生理くらいで……」と我慢してしまうのではなく、きちんと病院を受診したり薬を服用するなど、適切な対処で自分をいたわってくださいね。

〇ライタープロフィール
きのコ
多拠点生活をする文筆家・編集者。すべての関係者の合意のもとで複数のパートナーと同時に交際する「ポリアモリー」として、恋愛やセックス、パートナーシップ、コミュニケーション等をテーマに発信している。不妊治療や子宮筋腫による月経困難症をきっかけに、女性の身体のことに興味をもつようになった。子無しでバツイチ。著書に『わたし、恋人が2人います。〜ポリアモリーという生き方〜』。

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